研究課題/領域番号 |
26511007
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉川 夏樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90447615)
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研究分担者 |
原田 直樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50452066)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / 水田 / 農業用水 / 移行係数 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,南相馬市の試験水田において用水経由で流入するCsのイネへの移行のメカニズムを解明するため,平成26年度と同様の実験を実施するとともに,懸濁態Csの水口付近への蓄積を再現するモデルを構築した. 実験は,取水口から主流方向に対し平行に波板を設けることで,水流の拡散を抑制し,水田内に一次元的な流れを創出した.流入点からの距離に応じて,田面水・土壌を採取し,水試料の懸濁態・溶存態Cs濃度およびSS濃度,土壌試料のCs濃度をそれぞれ測定した結果,田面水の溶存態Cs濃度は1 m地点が最も高く,水尻にかけて線形的に54~86 %低下することが明らかとなった.また,土壌のCs濃度は流入点近傍の1 m地点が最も高く(21 m地点の1.6倍),流入点からの距離に応じた非線形的な低下傾向があった.田面水1Lあたりの懸濁態Cs放射能については水尻で低下する傾向があった. 懸濁態Csの動態を検証するため,試験水田の耕区を対象として,系外から灌漑水に伴い水田へ流入する浮遊物質の動態(浮上・沈降・輸送)を表現する二次元モデルを構築した.計算の結果,水田土壌のCs濃度変動の計算値と実測値は,その程度・傾向ともにおおむね一致した.試験水田と同様の灌漑期間を対象としたシミュレーション結果では,流入点を中心とした2 m程度の範囲に懸濁物質の沈降に伴う水田土壌のCs濃度上昇がみられ,最も変動幅が大きかった地点では1150Bq/kgの濃度上昇があった.こうした結果から,水口付近における水田土壌のCs濃度の上昇は,用水経由で流入する懸濁物質の蓄積が要因であることが考察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に予定していた研究内容は全て実施できたことから,順調に進展している.平成27年は,平成26年の調査結果の妥当性を裏付けるための再調査を実施した上で,当初の予定通り数値モデルを構築し,計算によってほ場内の土壌およびイネのCs濃度の空間的な偏りを再現できた. 当初予定していた二本松市東和地区のほ場は水管理方法が実験に適さなかったことから,代替ほ場として南相馬市小高地区のほ場を用いた.こうした対応により,2箇所の試験田を対象とした調査が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は最終年となるため,研究目的である水口付近の土壌及びイネのCs濃度の上昇のメカニズムを明らかにし,研究を総括する予定である.これまで同様の調査・実験を継続するほか,懸濁態Csのみならず溶存態Csのほ場内動態を再現するモデルを構築する.また,こうした結果に基づき,市場で流通する米の安全性を高めることを目的に,生産・出荷に向けた対策案を提案することを最終的な目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月最終週に研究打ち合わせを予定していたが,参加者の都合が合わずに延期されたため.
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次年度使用額の使用計画 |
延期された研究打ち合わせが今年度4月に予定されていることから,これに充当することとする.
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