水環境中のCsを除去するための浄化技術として自然素材の活用を検討してきた。最終年度はクン炭およびオガクズ(ブナ)それぞれの表面特性や素材からの溶出物質と吸着現象との関連性を調べ、吸着機構について検討した。ゼータ電位測定によって、Cs吸着前の両素材の表面電位はともに負の電位であることから、Csイオンをそれら表面に吸着しやすいことが示された。クン炭の方が絶対値が大きくなったため、相対的により多くのCsを吸着が可能であると予測された。固定吸着層実験では、各素材に対するCs溶液の接触時間の検討を行った。クン炭の場合には、Cs溶液(10ppm)の通水速度の上昇に伴いCs吸着量は減少した。一方、オガクズ(ブナ)では、通水速度の上昇に伴いCs吸着量は増加した。さらに、素材自体からの溶出物質とCs吸着との関連性について調べた。実験の結果、素材それぞれからのK成分の溶出変化とCs吸着変化が相関することが示された。この現象を確認するために、交換性塩基のCa溶液を通水することでK溶出変化とCa吸着変化を比較した結果、Cs吸着と同様の結果が得られ、両素材ともにCs吸着現象は、KとCsのイオン交換現象によることが示唆された。効果の持続については、通水速度を20mL/minとした場合に、クン炭(10g)では30時間、オガクズ(ブナ)(20g)で3時間であった。また、オガクズ(ブナ)の吸着現象のみにおいて、初期Cs溶液濃度(C0)を通水後の溶液濃度(C)が超過するという特徴的な現象が示され、この現象は初期Cs溶液濃度の上昇によって超過率は減少した。 以上の結果から、本研究の目的であった自然素材を活用したCs除去においては、クン炭について、効果の持続時間が十分に得られ、通水濃度によらず安定した吸着効果を示したため、現地における活用は適当であると考えられ、広範囲の農業地域の用水路等に適用され得る。
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