研究実績の概要 |
昨年度までに462系統(約2,700個体)から選抜した低吸収及び高吸収候補個体の後代では、変異形質が固定されたと思われる系統は確認できなかったことから、新たに作成した820系統(約4,800個体)のM2種子を水耕栽培し、15系統から低吸収候補個体を、27系統から高吸収候補個体をそれぞれ選抜した。選抜にあたって採取する葉位によってセシウム濃度が異なることが昨年度の試験で示唆されたため、播種後の育成期間及び葉位と葉中セシウム濃度との関係を更に確認するために、播種後17日、21日または38日間育成(いずれも最後の3日間に50ppbのセシウムを添加した水耕液を使用)した野生型植物体を測定した。いずれの育成期間においても葉位によって葉の重量とセシウム濃度の関係は異なり、最新葉へ優先的に蓄積される傾向が認められた。第2葉は発達期間が第3葉以降に比べて短いため、濃度測定の個体間差が出やすかった。できるだけ早期にセシウム吸収能力の異なる個体を選抜するためには、計21日間育成して第3葉を採取する方法が望ましいと考えられ、また、採取時に第4葉が出現していない個体については相対的に濃度が上がることに注意する必要があることがわかった。昨年度の試験から、No.312系統はセシウムの移行速度が遅いことが示唆された。一般に、低カリウム濃度条件ではセシウムの吸収が促進されるため、低吸収の特性をより顕著に確認できると考えられる。通常に比べて1/2及び1/4のカリウム濃度条件でNo.312系統を水耕栽培し、部位毎のセシウム濃度を測定した。基部及び第2葉では、No.312系統と野生型の差は明確では無かったが、第3葉及び第4葉については、特に1/4濃度条件で低い傾向が認められた。
|