研究実績の概要 |
昨年度、新たに作成した炭素イオン照射由来の計820のM2系統(約4,800個体)から、水耕栽培によりセシウム吸収能力が異なる変異候補個体を一次選抜した。これらの個体の自殖により得たM3世代の種子を育成し、今年度までに最適化した水耕栽培方法で評価した。ストライプまたは黄緑色の葉色を示す個体がM2世代の4系統で確認されたが、これらの個体に由来するM3個体は全て同様の葉色を示し、セシウム吸収量も少ないことから形質が遺伝的に固定していることが確認された。また、昨年度までの試験でセシウム吸収能力が低いと考えられるNo.312-4の後代及びNo.312-8の後代をさらに評価するため、ワグネルポットで栽培した個体のわら及びもみに含まれる非放射性セシウムの含量を調査した。各系統6個体をビニルハウス内で栽培し、地上部を収穫後、乾燥させた植物体を粉砕した。粉砕した各個体のわら100mg及びもみ50mgを濃硝酸で分解した後、それぞれ1 ml及び0.5 mlの0.1N硝酸に再溶解した溶液を原子吸光分析装置で測定した。コシヒカリに比べてNo.312系統は同等あるいはやや低い濃度を示したが、統計的に有意な差とは言えなかった。以上の結果から、当初の一次選抜方法には測定誤差を生む要因が多く含まれていたが、最適化することにより、セシウム吸収能力の異なる個体を幼苗の段階で選抜できることが示された。また、No.312系統はコシヒカリと同等の生育を示し、セシウム吸収量が低い可能性があるが、明確なデータを得るには至らなかった。
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