本年度は、初年度実施の英国歯科医師継続専門研修制度に対して考察を深めるために、歯科医師専門医登録制度・教育制度について、歯科補綴専門医(Specialist list of Prostodontist)の詳細調査を行った。英国では、継続専門研修が義務であることに加え、専門医は13専門医称号がGeneral Dental Coucil(GDC)により管理されていた。専門医取得は、認可された3年~5年の研修課程での研修(教育)が必要であった。教育課程は卒前教育と同様に詳細なカリキュラムが組まれており、知識・技能・態度が評価されるものである。各専門医には習得内容が明確に求められており、各教育機関での差異が生じることを防ぎ、質担保を行う仕組みであった。日・英に関する歯科補綴専門医の考察は、日本補綴歯科学会第9巻1号(18~24頁)に論文投稿した。 ASEAN加盟国であるタイの調査は、歯科医師継続専門研修の状況を調査した。2015年段階で、ASEAN10カ国では、ブルネイ年間・マレーシア年間30ポイント、シンガポール2年間70ポイントなどであり、ラオス、タイ、ベトナムでは義務的制度は存在しなかった。タイでは、2017年2月現在、義務的継続研修が、歯科医師、医師などを対象に準備・開始されていた。歯科医師は、本年の卒業生から義務となり、以前の歯科医師は努力義務的な扱いということであった。研修内容は、(案)段階で自発的知識習得、学術会議、長期継続教育、認定公表した学術活動などと定められ、5年ごとのポイント上限も定められていた。 各国での継続専門研修制度は異なるが、質保証の観点から、EUやASEANなどの経済領域内での資格相互認証が進むに従い、継続専門研修の必要性が高まり、制度内容の明示が必要となると考えられた。また、継続専門研修制度の存在が専門医制度の成立の前提条件となると考えられた。
|