本研究は,EUにおける司法政治の分析手法の展望を探るものである.これが重要なのは第一に,各国政治の枠内でも,司法部門の判決・決定を核とする法的な問題解決が比重を増しているからである(司法化judicialization).第二に,強い司法的問題解決枠組みはEUの特徴とされているが(法による統合integration through law),その知見は他の国際機関の分析にも応用可能だからである.検討の結果,初期の単純な法対政治の対置に代えて,現在の研究の前線は,政治部門による法的解決の条件付けや,その中での法的解決の自律性の確定,さらには司法部内の動的な相互作用などにあることが明らかになった.
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