研究課題/領域番号 |
26512016
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
四方 理人 関西学院大学, 総合政策学部, 准教授 (70526441)
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研究分担者 |
田中 聡一郎 関東学院大学, 経済学部, 講師 (40512570)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 就労支援 / 教育支援 / 生活保護 / 生活困窮者自立支援制度 / 政策効果 |
研究実績の概要 |
本研究は、埼玉県が実施した生活保護受給者に対する就労支援プログラムと教育支援プログラムのデータ分析に基づく定量的な政策評価分析を行うことで、就労困難者や貧困世帯の子どもに対する支援のあり方について考察することを目的とする。平成27年度から新たな生活困窮者自立支援制度が始まり、任意事業ではあるが、各自治体において生活困窮者を対象とした就労支援(就労準備支援事業)や教育支援(子どもの学習支援事業)が実施されるようになった。本研究では生活困窮者自立支援事業のモデルのひとつである埼玉県の「生活保護受給者チャレンジ支援事業」(以下、アスポート)のデータを用いて分析する。 2016年度の進捗状況としては、前年度までと同様に、就労支援に関しては、アスポートの独自調査によるデータ分析については、就労支援の期間と就労開始の関係について分析を行っている。教育支援については、高校進学についての分析を行っている。 2016年度の研究成果としては、生活困窮者自立支援制度の現状について分析を行い、同制度の課題として、就労支援での成果や生活保護の適用以外の多様な成果の蓄積が求められることなどを議論した(田中2017b)。さらには教育支援のあり方として、高校進学支援だけでなく高校中退防止対策も併せて整備する必要性についても、アスポート事業の紹介とともにまとめた(田中2017c)。また『平成26年全国消費実態調査』で子どもの貧困率が大きく低下した要因についても検討した(田中2017a)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度の研究成果は以下のとおりである。四方(2016)では、社会保障制度全体の動向について概観し、低所得層に対する労働所得や社会保険料負担が与える影響についての分析を行い、今後の低所得者支援の方法について考察を行った。田中(2017b)では生活困窮者自立支援制度の初年度の支援状況と課題について検討を行った。支援状況からは、就労支援の分野で成果をあげていると考えられるが、一方で生活保護の適用も支援の選択肢として利用されていることがわかった。今後は就労や生活保護の適用以外の多様な出口の確保が課題と考えられる。また教育支援の分野については、田中(2017a)で最新の『平成26年全国消費実態調査』における子どもの貧困、経済状態について議論した。さらに、田中(2017c)では埼玉県のアスポート事業を事例として、教育支援の制度設計において、高校進学支援だけでなく、高校中退防止事業も政策の有効性を高めるために重要であることなどを指摘した。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、アスポート事業の生活保護受給者への支援データ用いた就労支援、教育支援の統計的手法を用いた分析を論文の発表や書籍の公刊などを通じて公開していく。 具体的には就労支援については、アスポートの支援事業の影響として、就職率への効果だけではなく、生活保護からの退出(「保護の廃止」)についての分析も行う。また、アスポートの支援事業の分析を通じ、生活保護受給者だけではなく、生活困窮者全体に対してどのような政策が望ましいかについての考察を行うことを目的とする。 教育支援については、支援データを用いて、高校進学に対して、アスポートの支援状況がどのように影響を与えているか検討を行う。また子どもがいる生活保護受給世帯のうち、世帯主が障害・傷病を有している世帯は約3割いるという厚生労働省の報告もあり、それぞれの世帯が抱える生活困窮が、子どもの高校進学に与える影響についても検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画を効率的に進めた結果、次年度に向けて本研究課題についての研究書の新たな出版計画が進められるようになった。補助事業期間を延長することによって、より発展的な内容を含んだ研究書を作成し、研究成果を発表していきたいと考えている。そのため研究代表者と研究分担者の執筆・編集会合を開催する必要があり、次年度に予算を繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
主に執筆・編集会合の旅費に利用する予定である。
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