本研究は、埼玉県が実施した生活保護受給者に対する就労支援プログラムと教育支援プログラムのデータ分析に基づく定量的な政策評価分析を行うことで、就労困難者や貧困世帯の子どもに対する支援のあり方について考察することを目的とする。平成27年度から新たな生活困窮者自立支援制度が始まり、任意事業ではあるが、各自治体において生活困窮者を対象とした就労支援(就労準備支援事業)や教育支援(子どもの学習支援事業)が実施されるようになった。本研究では生活困窮者自立支援事業のモデルのひとつである埼玉県の「生活保護受給者チャレンジ支援事業」(以下、アスポート)のデータを用いて分析する。 本年度の前半は、①2000年代以降の就労支援、住宅支援、教育支援の政策展開についての研究、②アスポート事業を通じて明らかになった生活困窮者の実態像の再検討を実施した。本年度の後半には、以上の2点の研究課題を踏まえた原稿執筆を行い、2018年1月までに草稿の執筆を行った。生活困窮者自立支援法の改正が控えており、まとめの執筆などで時間を要しているが、これらの研究成果は2018年度中に公刊予定の書籍に所収される予定である。アスポートから生活困窮者自立支援法に至った経緯に関する制度研究とデータ分析をあわせて、新しい生活困窮者支援のあり方を考察する総合的研究として研究を実施した。
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