研究課題
高齢者数増加が確実視される将来の社会では、高齢者の多様化が予想される。この多様化の医学的・生物学的見地からの理解にはモデル動物が必要だが、国の内外に関わらず、まだ未開発である。申請者は、ストレス防御と造血発生の研究をゼブラフィッシュ遺伝学を活用して行い、独自の成果を挙げてきた。この過程で、ゼブラフィッシュが老化研究の集団解析に、倫理的・経済的に有用であると認識した。本研究は、老年学におけるモデル動物として、ゼブラフィッシュ活用の有効性調査と解析系確立を目的とする。本年度は、まず、ゼブラフィッシュ個体の識別法を確立した。具体的には、蛍光物質の内部注入によるもので、長期観察に耐えうることも分かった。次に、野生型種を用いて、部分的に各種長期観察を開始したが、今のところ、同居匹数などによる影響は、まだ見出すことは出来ていない。最後に、ゼブラフィッシュの老化度・健康度を簡便に測定する方法の構築であるが、泳力測定、視力測定、聴力測定、などを測定するための機器を現在、制作している。
2: おおむね順調に進展している
ゼブラフィッシュ個体の識別法は確立できた。特に、Casper系統といういわゆる透明ゼブラフィッシュ系統を用いると、有効であることがわかった。次に、部分的解析から、野生型種は老化に強いため、飼育法による老年度の違いを生み出すには、大規模解析が求められる可能性が浮かび上がった。そこで、現在、がんになりやすい系統や老化しやすい系統を用いることを検討し、育成を進めている。最後に、老年度の評価システムであるが、泳力測定、視力測定、聴力測定、などを測定するための機器を現在、制作中である。
今後の課題は、老年度を測定しやすい系統の調製と、評価システムの確立である。系統に関しては、Casper系統(黒色色素・虹色色素ができない二重変異体)と易がん性のTP53変異系統の三重ホモ変異系統と、Casper系統とストレスに弱いNrf2系統の三重ホモ変異系統を準備し、試みる予定である。時間がかかるのが難点であるが、粛々と進める予定である。評価システムに関しては、泳力測定、視力測定、聴力測定、などを測定するための機器を完成させ、これらを用いて、まず野生型老魚と野生型若魚の違いを測定し、老年度測定に有効かを検証する。
次年度完成予定の測定機器用に使用する予定で有り、その分、本年度分の使用を控えた。測定機器については、自作し予算の縮減に努めるつもりでいる。
主として、自作を予定している各種測定機器の材料購入費に用いる。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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