研究課題
高齢期の入口にさしかかった時点で受検する総合的な健康診断の結果から、その後に死亡や要介護状態に陥る確率を示す臨床予測モデルを構築することを目的とした。愛知県の大都市近郊の都市において、10年にわたり、各年に65歳を迎える者に総合的な健康診断(臨床検査および質問票調査)を実施し、受検者をそれぞれの健康診断から11年にわたって人口動態統計、介護保険制度、および保健師の訪問を用いて追跡し、転帰(死亡もしくは要介護状態)の発生を把握した。健診の各検査値および質問回答と転帰事象との関連について、第一に単変量ロジスティック回帰分析によるスクリーニングを行って予測因子の候補を挙げ、多変量ロジスティック回帰分析によって項目を逐次選択しながら最終的な予測因子を決定し、予測モデルを構築した。得られた予測モデルの性能について、Hosmer-Lemeshow検定による校正を行うとともに、ROC曲線のc統計量を算出して峻別能を評価した。さらにブートストラップ法によって内的妥当性を検証した。1525名の女性と1548名の男性を追跡し、それぞれ105名および211名の転帰事象を観察した。分析の結果、抽出された因子は女性で15項目、男性で16項目であった。男性において離別を含む独身状態が重要な予後因子であることがあらたに判明した。実測結果は予測モデルから逸脱しておらず(適合度検定にて女性はp=0.93、男性は0.58)、峻別能は女性が0.763(95%信頼区間0.714-0.813)、男性が0.735(同0.699-0.771)であった。また、内的妥当性も十分に確保されていた。本研究により、高齢期の入口に立つ個々の住民に対して医療や行政支援の必要性を見積もり、対象者に優先順位をつけて措置を講ずることができる可能性が示された。
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Environmental Health and Preventive Medicine
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10.1016/j.clnu.2018.01.018
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