本研究はわが国におけるライフエンディング、すなわち「人生の終末、および近親者との死別に備える準備行動」を題材として、その円滑で効果的な支援に向けた多職種連携のありかたを探ることを目的とした取り組みである。今日のライフエンディングをめぐる諸々の困難は、少子高齢化の加速と連動して喫緊の社会問題となっているものの、その社会-文化的な淵源までを包摂し、ライフエンディングに関連する各種の現場を焦点化した研究が充分に展開されているとは言い難い。これに対して本研究では、主に人類学の知見と手法を用いて現代におけるライフエンディングの多様性・多元性と、それに対応する望ましいサービスの支援環境を探究し、超高齢社会に呼応した「老いて、死ぬ」プロセスをめぐる課題を焙り出すことを目指して、計3年度の研究期間で最終年度に当たる2016年度の作業を展開した。 この2016年度は研究全体の総仕上げに当たる「フェーズⅤ」の期間として、「エスノグラフィの完成」と「フィードバック」を計画の中心に据えており、双方ともに所期の成果を達成することができた。前者についてはフィールドワーク調査に基づく単著文献を2017年1月末に刊行したことに加え、学会における査読付き論文の刊行と発表を果たした。後者についてはNPO等の各種団体や調査対象者との協働的コラボレーションを実現し、本研究の成果が継続性のある貢献を果たすことができるような枠組みを築き上げている。さらに、文献資料調査の継続実施に加えて、前年度の「フェーズⅣ」までに展開したフィールドワークの補足調査も断続的に行って研究内容の精緻化に努めた。以上のとおり、本研究は全計画を滞りなく遂行しただけでなく、所期の目論見を上回る成果をあげたと同時に、今後も高齢化が加速するわが国において本研究の視座を共有した発展的な取り組みがさらに要請されている状況を明らかにしたと考えられる。
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