研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、タッチする手の形状や位置に依存せずに、正しくタッチ回数のみを数えられるようなカウンターである。このため、連続変形によって変わらない不変量を教えてくれるトポロジーの数学を用いる。特に、リアルタイムで素早く動作するタッチセンサーを設計するには、計算速度も重要となってくるため、モース理論に基づいた、画素の中でも極値となる少数の点のみを数えるアルゴリズムを用いる。 本年度の研究においては、前年度までにアルゴリズムを完成させたタッチスクリーンを改良する形で、スクリーンの形状が必ずしも平面でなく、曲がった曲面状のタッチスクリーンに適用できるようにアルゴリズムを一般化することに成功した。このアルゴリズムは、任意の曲面状をしたタッチスクリーンに対して、連続変形で不変な特徴である塊の数や穴の数を数えることができる。特に、ペットボトルを想定した円筒型や、平面型スクリーンを周期境界にしたとも見なせるトーラス型、ボールの握りなどに応用が期待される正多面体型のスクリーンに対しては、具体的なプログラムをArduinoやProcessing上で開発して、デモンストレーションを成功させることができた。この曲面型タッチスクリーンへのアルゴリズムの改良は、幾何学を対象とするトポロジーの数学を本質的に役立てる形となっているが、例えば、手の握りが「ペットボトルを巻いている」ことの検出などを可能とするなど将来的な応用がおおいに期待される。 なお、本研究課題では高度な数学を用いるため、成果を広く理解して貰うための助けとなるようなレビュー論文が必須であると思われたため、和文の解説記事にまとめた(日本神経回路学会誌, Vol.23, 2016)。
|