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2014 年度 実施状況報告書

秩序構造を与える新奇な反応拡散現象の化学的・数理的モデル化

研究課題

研究課題/領域番号 26520203
研究機関山形大学

研究代表者

並河 英紀  山形大学, 理学部, 教授 (30372262)

研究分担者 方 青  山形大学, 理学部, 教授 (10243544)
研究期間 (年度) 2014-07-18 – 2017-03-31
キーワード反応拡散 / Liesegang / 非平衡
研究実績の概要

反応拡散現象は化学的には「シャーレで合成できる化学的パターン材料構築法」として特徴づけられ、例えば反応拡散現象の代表例であるLiesegangパターンは物理的な大型装置に依存しない微細加工技術として世界的に研究されている。ただし、反応拡散現象としての原理的制約により、パターンとして析出可能な材料が「難溶性塩」に限定されることが化学的応用へ向けた問題となっており、新奇な化学的反応拡散現象を発掘することがそのブレークスルーとなると期待されている。一方、数学的には、独自かつ新奇な反応拡散数理モデルを構築することは、化学、生物、経済など科学全般へ適用可能なパターン形成理論を構築できるため、新奇な化学的反応拡散現象の発掘に基づいた数理モデル構築は、科学全般への波及効果を有する重要な研究として議論される。つまり、反応拡散現象は化学的にも数学的にも独立した重要性がある一方、両者協同により化学・数学を超えた波及成果を獲得するものとなる。この目的へ向け、今年度は新奇な反応拡散現象である還元反応型Liesegang現象に関し、化学的アプローチとしてHASB則などを考慮したコントロール実験より反応素過程の追求を行った。得られたデータは、数理的アプローチとして有限差分スキームを用いたパターン形成の数値計算を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成26年度の研究目標は還元反応型Liesegang現象に関する「化学反応素過程の提案」と「数理モデル化と計算の実行」である。まず、前者に関してはHSAB則を考慮した系統的な実験を行った。すなわち、還元される金属イオン種の錯形成平衡定数をHSAB則の観点より制御し、パターン形成に及ぼす影響を調査した。その結果、パターン形成には錯形成過程の存在が重要であることを実験的に示すことに成功した。つまり、平成26年度の研究において、還元反応型Liesegang現象の反応素過程においてもっとも重要なステップであると推測されていた錯形成過程が存在することを明確化することに成功した。
また、観察された還元反応型Liesegang現象に対し、海外の研究者たちが提案した反応拡散方程式に対して、リングパターンが生じることを我々の有限差分スキームで確認した。その反応拡散方程式が複雑な計算をもたらすため、反応項の簡略化を図った。新たに反応拡散方程式を提案し、計算量を遥かに減らしてリングパターンが生じることに成功した。

今後の研究の推進方策

平成26年度はおおむね順調に進展しているため、平成27年度は当初の予定通り、平成26年度に得られた化学モデルおよび数理モデルに対する「見直し」を実施する。すなわち、Liesegang特有の空間則・時間則などが化学的・数学的に再現するかどうかの検証を通じた提案モデルの確認である。その為、あえて化学的・物理的な揺らぎを与えた際のLiesegang構造の変動を数学的に再現できるかの検証のための化学的追実験を行う。具体的にはf(u)への影響を有する反応温度、f(u)ならびに閾値に影響を有するgelatin濃度による変動性を検証し、実験結果と数理計算結果との相互比較に基づいて反応素過程の見直しを実施する。また、我々の研究チームが提案した反応拡散方程式をさらに実験と数値計算で改善し確立する。実験で得られた様々なパターンを反応拡散方程式の数理モデルでも実現できるために、各パラメータを変化させながら数値計算によるシミュレーションを行う。反応拡散方程式の改善によりリングパターン以外のパターンが現れることが期待できる。

次年度使用額が生じた理由

シミュレーションを実施する計算機の性能が向上したため、より低予算で購入できたため。

次年度使用額の使用計画

平成27年度分と合算して実験用試薬費に充てる予定。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Liesegang phenomena: Spontaneous pattern formation engineered by chemical reactions2015

    • 著者名/発表者名
      H. Nabika
    • 雑誌名

      Curr. Phys. Chem

      巻: 5 ページ: 5-20

    • DOI

      10.2174/187794680501150908110839

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Liesegang Patterns Engineered by a Chemical Reaction Assisted by Complex Formation2014

    • 著者名/発表者名
      H. Nabika, M. Sato, K. Unoura
    • 雑誌名

      Langmuir

      巻: 30 ページ: 5047-5051

    • DOI

      10.1021/la5003786

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 微小空間での非平衡場がもたらす特異現象2014

    • 著者名/発表者名
      並河英紀
    • 学会等名
      第33回物理化学コロキウム
    • 発表場所
      米沢
    • 年月日
      2014-09-20
    • 招待講演

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公開日: 2016-05-27  

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