研究課題/領域番号 |
26520205
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
北畑 裕之 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20378532)
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研究分担者 |
小磯 深幸 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (10178189)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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キーワード | 界面張力 / 変分原理 / 自己駆動液滴 / 微分幾何学 / マランゴニ効果 / 表面張力 / 極小曲面 |
研究実績の概要 |
本研究においては、界面張力に空間的な勾配がある液滴系について、物理学の立場と数学の立場から運動と変形をどのように記述できるかにアプローチすることを目的とする。特に物理学の立場からは、流体力学の立場で考え、界面張力勾配は界面におけるストレスとしてとらえることで議論ができる。 そこで、本年度は、界面張力勾配のある非圧縮液体の液滴を考え、その界面に界面張力勾配がある場合についての考察を行った。具体的な実験系としては、Belousov-Zhabotinsky反応の液滴系がある。この系において、自発的に化学波が発生することで界面に界面張力勾配ができ、運動することをこれまでに報告した。その発展として、本年度は、理論的に予測されている液滴内部でのマランゴニ対流を可視化し、液滴の運動の向きの変化とともにその対流の向きが変わることを見出し、報告した。さらに、理論的に、マランゴニ対流のために起こるエネルギー散逸が、界面でのストレスにより得られる仕事とバランスすることも導いた。 また、界面張力の測定法として知られている懸滴法に関して、微分幾何学で得られる知識を用い、液滴形状を考察することで精度を上げることができると考えている。そのための予備段階として、測定した液滴形状から液滴の母線の長さを精度よく測定するための方法についての考察が必要であることが明らかになった。そこで、物体の周長を精度よく測定するための画像処理方法についての考察を行った。具体的には、画像処理において、物体の内部の最近接点からの距離が一定値以内である領域の面積を求めることで、精度よく周長が測定できるのではないかと考え、実装し検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液滴の界面において界面張力勾配があるときに引き起こされるマランゴニ対流に関して、実験的に可視化することができた。また、その際のエネルギーの流れに着目した議論を行い、界面張力がする仕事と、マランゴニ対流によるエネルギー散逸がつり合っていることを明らかにした。この内容は、査読付き国際誌に投稿し、採択され、予定以上に進展しているといえる。一方で、分担者である小磯との共同研究については、議論の時間を十分にとれなかったため、十分に進んでいるとは言えない。そのため、全体とすればおおむね順調な進み具合であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
実質、研究が後期から始まったこともあり、分担者である小磯としっかりと議論をし共同研究を進める時間はあまりとれなかった。本課題のメインテーマは、代表者である北畑が物理学の立場から、分担者である小磯が数学の立場から、界面張力勾配のある液滴の形状や運動の決定の原理に迫り、かつそこで得られた知見を界面張力測定法の開発に生かすところであるため、代表者・分担者間のコミュニケーションをしっかりと図り、共同研究を進め、論文などの成果として発表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
液滴内部での対流の可視化のための実験に、可視化粒子を購入し、画像処理が可能な動画が撮影できるかを試す必要があったが、初期段階で購入した粒子で可視化が可能であったので、購入費用が当初よりも少なく済んだ。また、代表者、分担者の予定があわず、研究打ち合わせの日程をとれなかったために旅費が予定よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
代表者である北畑と分担者である小磯が頻繁に議論することが共同研究の進展のために必要であるため、共同研究打ち合わせのための旅費として使用する予定である。
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