本研究においては、界面張力により規定される物理現象について、微分幾何学を用いた変分原理による数学的定式化と界面現象に関する物理的知見を統一的に理解すること、そして、それを応用へとつなげることを目標とした。微分幾何学を専門とする研究分担者の小磯教授と非線形物理学を専門とする研究代表者の北畑が分野間協働を行うことにより研究を進めてきた。その結果、次に示すような成果が得られた。 (1)27年度に引き続き、楔形に配置された2枚の基板の間に挟まれた液滴の形状に関する議論を進めた。27年度までにほぼ議論の枠組みは完成していたが、厳密な安定性条件について議論を深めた。具体的には、楔形の開き角と液体と基板との濡れ角をパラメータとして楔に沿った液滴の安定性を議論した。その結果、液滴が安定に存在できる必要十分条件を変分原理から決定することができた。たとえば、楔の間に凹形状で満たされる液体は、その表面が円筒面の一部となり、常に安定であることを示した。現在、得られた内容を論文として執筆中である。 (2)基板上にある液滴の形状を実験的に測定することを目指した系の構築を試みた。具体的には、液滴を作る液体の屈折率の違いを用いて、格子状の模様がどのように歪んで見えるかを測定することによって、液滴の形状を計算した。その結果、平衡形状では、理論的に予想される形状であることが明らかになった。また、基板を傾け重力によって滑り落ちる液滴の形状を計算し、形状を簡単な近似式で近似することにより、その形状の特徴を記述することができた。
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