研究課題/領域番号 |
26520206
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
青木 高明 香川大学, 教育学部, 准教授 (30553284)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2018-03-31
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キーワード | 郡村誌 / ネットワーク解析 / コミュニティ検出 |
研究実績の概要 |
本課題の目的は,江戸期の石高・人口データ等を元に当時の人口動態・生産システムを統計・ネットワーク科学のアプローチから理解することである. 本課題の研究背景として,地域の人口や災害・疫病・風土・生産・気象等を包括的に叙述する「地誌」の研究があり,特に近世江戸期について日本は世界史的に類を見ないほどの史料がある.例えば,天草の元禄4年(1691)のデータは「天草嶋中人高帳」と題した史料から抽出できるものであり,石高・人数・男女 の区別・世帯数・船数・漁師数・隣村との交通などが各村単位で記載されている.このようなデータが各地域で現存している.また世界的に見ても幾つかの地域では,同程度の解像度のデータが現存していることがわかってきた.特に近世南ボヘミアの歴史資料では平時と天災時の収穫量の記録が残っている. 一方でこれらの史料は地域固有の言語・文化に根ざしており,数量的記述についても標準化・規格化されていない.そのため国際間や時代間での比較が難しく,個別地域・事例毎の叙述的研究に留まる危険性が高い.これを克服するためのアプローチとして,数学をベースにGIS分析の現状から抜けだし地域の普遍的記述の開発が望まれている.そこで本研究では,村落間の繋がりをグラフとして記述し,コミュニティ検出解析する事で,村落クラスタを同定する.その結果を時代間・地域間比較を行うことで.地域固有の史料の背後にある普遍的現象への質的理解に繋げたい. 本年度は.既に翻刻化された土佐安芸郡の地誌データについて.Gravity modelを変形した相互作用関係を導入し.各指標毎に階層化された各村落ネットワークを構築した.そのネットワークについて.ネットワーク科学で知られいてるグラフ分割を行うことで.5つの村落クラスタを見いだすことができた.現在.地域間比較のため,京都愛宕郡とドイツベルク地方のデータについても.同様の作業を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究費を実際に使用可能になったのが10月以降となったため.当初計画の実施が遅れることになった.本研究実施のためには,その基礎資料である各地域の地誌について翻刻化を行い,そして各村落の緯度経度情報を入力していく必要がある.これらの作業をアルバイト等を利用して進めて行く計画であったたため,研究費の執行時期が遅れた結果データ準備が遅れている.そのため現状では,事前準備していた高知安芸郡のデータ分析を進めている.また年度末から共同研究チームにおいて,順調にデータ処理を進める体制を整えることができた.次年度については予算執行が可能になり次第,順次データ入力と解析を進めていく.
また本課題は連携探索型数理科学の分野として,人文系(近世地誌および経済システム)と新規分野の開拓を行う.その実施において,なによりも研究者間の密な連携が大切である.この点については.定期的に打ち合わせの機会を持つことに成功している.
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今後の研究の推進方策 |
村落クラスター解析法とその活用事例を積み上げていくため,地域間の比較と異時刻間の比較について焦点を当てる.地域間の比較のためには.京都愛宕郡とドイツベルク地方についても同様の解析を行っている.また長時間の記録がある地域についてもデータ化を進め,異時刻間の比較による村落クラスターの時間変化を見ていく.
これらの成果は,10月の東アジア環境史学会・京都大学数理解析研究所での研究会「数理地理モデリングによる環境人文学の展開」で発表する予定である. また香川大学ICEDSとの連携を含めて、研究者間の密な連携を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を実際に使用可能になったのが10月以降となったため.当初計画の実施が遅れることになった.本研究実施のためには,その基礎資料である各地域の地誌について翻刻化を行い,そして各村落の緯度経度情報を入力していく必要がある.これらの作業をアルバイト等を利用して進めて行く計画であったたため,研究費の執行時期が遅れた結果データ準備が遅れている.
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次年度使用額の使用計画 |
年度末から共同研究チームにおいて,順調にデータ処理を進める体制を整えることができた.次年度については予算執行が可能になり次第,順次データ入力と解析を進めていく.
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