研究課題/領域番号 |
26520301
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
内田 義崇 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70705251)
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研究分担者 |
森泉 美穂子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター土壌肥料研究領域, 研究員 (10220039)
石井 聡 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10612674)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌 / アンモニア / 硝酸 / ヘアリーベッチ / もみ殻くんたん / 微生物 / 黒ぼく土 / 灰色低地土 |
研究実績の概要 |
作物残さ、もしくは植物体そのものは、有機肥料として有効活用することが出来れば、化学肥料施用量を減少させることが出来る。化学肥料は近年、値段の高騰や環境負荷リスク故に、施用量を削減することが長期的に見て維持可能な農業の発展に繋がるとされている。 植物体を肥料として有効利用する際に重要なのは、微生物による植物体の分解である。そのため、本研究では、肥料として用いることが出来る植物体が土壌表面で分解する際に、土壌にどのように窒素が蓄積するのかをまず調査した。土壌タイプによって、この分解と蓄積する窒素量の関係が異なると仮定し、日本の代表的な土壌である黒ぼく土と灰色低地土を用いた。植物体として、分解しやすく肥料として良く利用される(緑肥)ヘアリーベッチを用いた。さらに、日本農業で良く用いられ、土壌肥沃度の向上に役立つとされている、もみ殻くんたん(くんたん)の効果についても考察した。 結果として、ヘアリーベッチの分解に際して土壌表層にアンモニアが蓄積したが、黒ぼく土の方が灰色低地土よりもより多くアンモニアが蓄積した。さらに、くんたんの効果は、黒ぼく土ではヘアリーベッチ由来のアンモニア蓄積を抑制する効果があったのに対し、灰色低地土では、アンモニア蓄積量を増加させる効果があった。 黒ぼく土でのアンモニア蓄積は、ヘアリーベッチの分解が、消費より早く進んでいることを示している可能性がある。この実験は培養系で行ったため、アンモニアを酸化し、硝酸にする硝化のプロセスに着目した研究を進める必要がある。本研究結果は、土壌肥料学会で口頭発表された。 今後の実験に向けた予備的調査・試験をすでに初めている。土に元々存在していた窒素と、加えた植物体由来の窒素を分けて考察するための15N作物の作成などを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌表面における植物体の分解メカニズムが、何等かの理由で、黒ぼく土と灰色低地土で違うことを発見できたため、今後はその理由についてさまざまな視点から実験が開始できる。実験に用いる15N作物の作成は順調に進んでおり、それを用いた実験を今後重点的に行っていく予定である。さらに土壌微生物の群集構造を遺伝子を用いて解析する方法についても予備的な実験を行い、成功している。 土壌の通気性を調査する試験がやや難航したが、酸素センサー等を用いることにより、確実に達成できる見通しが立った。今後はこの方法を確立するために予備実験を引き続き行っていく。また、本年度の実験で、透水性についても土壌タイプ別に違いがある可能性が示唆された。その点についても追加実験を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
15Nを用いて、植物が土壌表面で分解する際に発生する亜酸化窒素ガスについての解析を行う。この方法で、ヘアリーベッチ由来の亜酸化窒素ガスと、元々土壌に蓄積している窒素由来の亜酸化窒素ガスを分けて定量することが出来る。そのために、農業環境技術研究所と連携して、同位体質量分析装置を用いるための準備を進めている。 土壌物理性についての実験も予備的に準備を進める。土壌の通気性は酸素センサーを用いて、土壌中酸素量を推定できるような方法を確立する。通気性のデータと15Nを用いて得られるデータを統合し、学術論文を執筆する予定である。さらに、土壌肥料学会での発表を始め、複数の学会での発表を予定している。 さらに、土壌表面に蓄積する窒素の形態として、今まではアンモニアや硝酸等、無機態窒素についての調査のみを行っていたが、今後はアミノ酸態窒素など有機体窒素を正確に定量しながら、より精緻に土壌表面での作物分解について調査する。アミノ酸態窒素については、分担研究者である森泉博士が予備的な解析をすでに行っており、今後より精緻な検証が行われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、アミノ酸を分担研究者である森泉が所属する研究所にて行う予定であったが、アミノ酸を含む有機体窒素よりも簡易的に測定できる、無機態窒素に興味深い結果が本年度得られたため、本年度は無機態窒素に着目した研究を行った結果、未使用額が生じた。今後は、アミノ酸分析を行い、より精緻に実験を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画は当初と変わらず、有機体窒素の動態を調べる予定である。
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