研究課題/領域番号 |
26520303
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 英光 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (40724191)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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キーワード | 植物微生物間相互作用 / アーバスキュラー菌根菌 / ストリゴラクトン / 栄養吸収 |
研究実績の概要 |
アーバスキュラー菌根菌(AM菌)は、植物と共生し、植物の栄養吸収を高める。植物ホルモンであるストリゴラクトンは、植物の生育環境に応じて生合成が制御され、AM菌の菌糸分岐を促進し、生長・共生を促進することが知られている。研究代表者らの研究室ではこれまでに多数のストリゴラクトンミミックを合成し、その生理活性を解析してきた。これらの化合物のAM菌菌糸分岐誘導活性を調べ、枝分かれ抑制や根寄生雑草発芽促進活性と比較することにより、選択的で高活性なAM菌共生制御剤を創製することを目的としている。 本年度は、デブラノン類のAM菌菌糸分岐誘導活性を調べた。デブラノン類はベンゼン環がフラノン環とエーテル結合で結ばれた簡素な構造をしており、三環構造がエノールエーテル結合でフラノン環と結ばれた天然ストリゴラクトンと異なり、合成が比較的容易なストリゴラクトンミミックであり、研究代表者らの研究室では種々の類縁体を合成してきた。供試したデブラノン類はいずれも天然型のストリゴラクトンと類似した構造を持つ合成ストリゴラクトンGR24と比較してAM菌菌糸分岐誘導活性が低かった。この結果は植物とAM菌とでは異なるストリゴラクトン受容機構を持つことを示唆している。来年度はデブラノン類以外のストリゴラクトンミミックや、化合物ライブラリーの中から活性化合物を探索する。また、実際に植物との共生条件で化合物が共生促進活性を持つかどうかの評価系を検討した。その目的で、AM菌共生時に発現が誘導される遺伝子にGFP遺伝子を融合させ、AM菌共生細胞を可視化できるイネを入手した。現在栽培条件・化合物処理条件とAM菌共生との関係を調査している。来年度はここで得られた共培養条件をもとに、化合物の共生促進活性評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに我々は様々な官能基で修飾したデブラノン類の生理活性とその特異性について解析を行ってきたが、本年度はデブラノン類のAM菌菌糸分岐誘導活性を調べ、いずれのデブラノン類も既知の合成ストリゴラクトンGR24よりもAM菌菌糸分岐誘導活性が低いことを見出した。この結果は植物とAM菌のストリゴラクトン認識様式の違いを示唆していると考えている。この知見は本研究の今後の展開において非常に重要な基礎的知見になると考えている。 また、本年度はイネとAM菌の共培養系も整備することができた。まだ改善の余地はあるが、今後の化合物評価系として有用だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者らの研究室で開発された、デブラノン類以外のストリゴラクトンミミックについてAM菌菌糸分岐誘導活性を調べる。また、化合物ライブラリーを用いたスクリーニングも着手する。 イネ―AM菌共生系はまだ最適化されていないため、最適化を進め、化合物の評価を行う。 また、根粒菌の共生への効果についても、ミヤコグサ―根粒菌系を用いて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
AM菌の培養に必要なCO2インキュベーターを新規に購入予定であったが、中古の既存のCO2インキュベーターを利用可能になったため、購入の必要がなくなった
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次年度使用額の使用計画 |
新たに構築したイネ―AM菌共生系によるスクリーニングにかかわるAM菌胞子、培土、消耗品等の費用に使用する。
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