研究課題/領域番号 |
26520308
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
足立 亨介 高知大学, 自然科学系, 准教授 (00399114)
|
研究分担者 |
池島 耕 高知大学, 自然科学系, 准教授 (30582473)
|
研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
|
キーワード | マングローブ / トラン県シカオ / 土壌細菌 / 腸内細菌 / カニ / セルロース分解 |
研究実績の概要 |
今年度の調査においてはフィールドとするタイ国ラジャマンガラ工科大学のキャンパス内のマングローブ林の10地点のマイクロハビタットにおいて林床から土壌をメタゲノム解析用のサンプルを採取した。また同地点でのセルロース分解活性を目的とした試料の調製も行った。メタゲノム解析は部分的に終了し、いずれの地点においてもProteobacteria門が全体の44-66%とほぼ半数を占めることが明らかになった。また多変量解析による結果から異なる10地点であっても海面からの高さが近い場合には似通った菌叢をもつことが明らかになった。このことは調査に用いたマイクロハビタットの菌叢が潮汐に影響を受けている可能性を示唆している。 また調査地で優占するP. indiarum(n=8), E. versicolor(n=7) N. smithi(n=6)を小型水槽に入れ,樹木の優占種であるフタバナヒルギの葉の色を3つ(緑、黄、茶)に分けてそれぞれの切片を同時に与えた。1ないし2日毎に葉を更新し,残った葉は回収した。与えた葉の推定乾燥重量と残った葉の乾燥重量の差から,摂食量を求めた。3種の1個体当たりの摂食速度とそれぞれのカニの推定生息密度を乗じると,3種による調査地のマングローブ落葉の消費量は0.62g m-2 day-1と推定された。また,6カ所でリタートラップを設置し推定した1日の単位面積当たり落葉供給量は1.79g m-2 day-1となり、カニが落葉の34%を消費すると推定された。これらカニの糞を回収し、メタゲノム解析用のDNA調製まで終えている。またこれらの糞の持つセルロース分解活性を目的とした試料の調製も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では「カニ類優占5種各々の土壌環境および腸内細菌の菌叢を把握すること」「各々でセルロース分解に関わる培養可能な株を複数入手すること」「落葉中のセルロース消費量をカニおよびその生息域の土壌それぞれについて見積もること」を到達目標とした。上述のようにおおむね順調に計画は進行していると考えられる。カニの腸内細菌叢の把握、株の入手、などは結果を得るに至っていない、またカニの落葉消費量をセルロース換算するには至らなかったことなど、当初の計画から外れているところもある。反面、カニの落葉の樹種および落葉後の経過期間などの違いを考慮した実験系を組みたて結果を出したこと、試験管内でのカニ消化液・腸内細菌・土壌微生物のセルロース分解能についての試料を前倒しして作成したことなどを考慮すると全体としてはおおむね計画通りに研究は進行していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は既に菌叢の把握された林床の土壌細菌からプレートアッセイ等によってセルロース分解酵素活性を有する菌を単離する。手元の試料を使いカニ腸内細菌の菌叢を把握し、同じくプレートアッセイ等によって同酵素活性を有する菌を単離する。また調査地点およびカニの腸内細菌のセルロース分解能を調製済みの試料を用いて測定する。フィールド調査においては飼育実験と野外観察の方法は本年度でほぼ確立できたので,次年度には野外と飼育実験の試料を併せて,セルロースと重合度の定量化を行い,カニによるセルロース分解能と種による嗜好性の違いとの関連性を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
メタゲノム解析やセルロースの定量などわずかながら実験が遅れているため。
|
次年度使用額の使用計画 |
27年度に実験および調査を行うことで執行する。
|