研究課題/領域番号 |
26520309
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
境 雅夫 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (20225775)
|
研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2017-03-31
|
キーワード | 窒素固定細菌 / 細菌群集構造 / セルロース分解細菌 |
研究実績の概要 |
刈草等を原料とした堆肥化の初期過程において細菌による窒素固定が生じていることを見出し、セルロースを唯一の炭素源とした無窒素培地にこの試料を添加したところ、セルロース分解に伴って窒素固定が進行することを発見した。この培養系(以下CD/NF培養系)は同じ培地で継代してもセルロース分解および窒素固定活性が安定して継続していた。そこで、この機能性微生物集団培養系の細菌群集構造を明らかにするとともに構成する細菌の分離培養を行った。 CD/NF培養系から直接 DNA を抽出し、16S rRNA遺伝子およびnifH遺伝子の PCR-DGGE解析により、培養系内の主要な細菌および主要な窒素固定細菌の群集構造を調査した。次に、16S rRNA遺伝子のクローンライブラリ法によって、培養系を構成する主要な細菌種を推定した。さらに、選択培地を用いて細菌を分離し、分離菌株の16S rRNA遺伝子およびnifH遺伝子のPCR-DGGE解析とCD/NF培養系のそれが一致する菌株を特定した。 培養系のDGGEパターンの結果から、16S rRNA遺伝子では12本、nifH遺伝子では少なくとも5本の主要なバンドが認められた。また、16S rRNA遺伝子のクローンライブラリのシークエンス結果からもCD/NF培養系の主要な構成細菌として、窒素固定細菌およびセルロース分解細菌の近縁種の存在が推察され、DGGE解析 の結果と一致していた。さらに、分離菌株のうち、nifH遺伝子の主要バンドと一致したものは、Azoarcus sp.、Pseudomonas sp.、Azospira sp.の3種が得られた。これらの細菌種は植物内生窒素固定細菌として知られる細菌であることから、CD/NF培養系には、植物内生窒素固定細菌とセルロース分解細菌とが共存している可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物遺体の分解過程において内生窒素固定細菌およびセルロース分解細菌の共存関係の解明のため、この共存系を構成する窒素固定細菌およびセルロース分解細菌の特定および分離を目的としていた。結果的に構成する細菌種のうち主要な窒素固定細菌を特定することができたため、ほぼ目的を達成していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
植物遺体中で生残した内生窒素固定細菌の植物への接種による共生系構築の確認を行うため、内生窒素固定細菌の植物遺体中での生残状況を確認するとともに、イネ科植物を栽培して内生窒素固定細菌の再共生実験を行う。また、共生系を構成する細菌の中には培養困難な種が存在していたため、非培養法による分子生態学的手法を用いて、その特性を明らかにする。
|