メタン発酵消化液(以下,消化液)の生物酸化処理によって,養液栽培における培養液としての消化液の利用可能性がどのくらい向上するか定量的に評価した。まず,メタン発酵・生物酸化処理それぞれのプロセス前後における投入バイオマスの窒素形態の変化について調べた。メタン発酵槽への投入バイオマスには果菜類・肉・魚などからなるモデル生ごみ(全窒素濃度2200 mg L-1,有機態窒素率94%)を用いた。メタン発酵プロセスではモデル生ごみが消化液に分解され,モデル生ごみに含まれる有機態窒素の約70%が消化液中の無機態窒素のアンモニウム態窒素に転換された。同じ無機態窒素である硝酸態窒素は検出されなかった。続く生物酸化処理プロセスでは,好気条件下で消化液が硝化作用を受けて改質され,消化液中のアンモニウム態窒素の約85%が改質消化液中の硝酸態窒素に転換された。トマトを対象とした湛水型ロックウール耕栽培実験では,消化液を培養液とした場合では生育初期に植物個体が枯死した一方,生物酸化した改質消化液の場合では,果実収穫まで植物が生育した。栽培中,改質消化液区の培養液中のアンモニウム態窒素ならびに硝酸態窒素濃度はそれぞれ0mg L-1付近まで低下した。このことは,栽培管理を適切に行うことで,投入バイオマス中に含まれる窒素の約70%が養液栽培における植物の窒素源として利用できることを示している。以上のことから,メタン発酵消化液の生物酸化処理は,養液栽培における資源循環利用を飛躍的に向上させると結論づけられた。
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