森林-水田の地目連鎖系では渓流水を通した塩基類の供給が知られているが、窒素供給は低いと考えられてきた。しかし、渓流水を介して水田へと移動する窒素には懸濁態、有機態成分も存在する。そこで、森林・水田土壌における窒素フラックスを推定するとともに、湛水条件下の水田土壌における窒素の無機化能を検証した。この結果、渓流水を介した遊離アミノ酸の供給量は小さいものの、水田土壌における平均滞留時間は数時間であり、即効性のある窒素供給源として働き得ることが示された。一方、渓流水を介した森林から水田への懸濁態物質の移行量、その無機化による窒素供給量は大きく、水田の地力窒素を高めていることが定量的に示された。
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