研究課題/領域番号 |
26520313
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
市野川 桃子 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主任研究員 (30470131)
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研究分担者 |
由上 龍嗣 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 研究員 (20392904)
黒田 啓行 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 主任研究員 (30416036)
岡村 寛 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, グループ長 (40371942)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2019-03-31
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キーワード | 管理戦略評価 / 再生産関係 / 我が国漁業資源 |
研究実績の概要 |
我が国の水産資源評価・管理における様々な問題・不確実性を明確にした。まず,国内資源の漁業データ・資源評価データを整備・データベース化し,一括して取り扱えるようにした。作成したデータベースを用い,我が国資源ですいてされている加入量・親魚量を既存の再生産関係にあてはめ,どのような密度効果が働いているかを検討した.既存の再生産関係としては,Beverton-Holt, Ricker, Hocky-Stick型再生産関係を用いた.これらの再生産関係に対してデータのあてはまりの良さをAICcで比較したところ,多くの資源でこれら3種類の再生産関係へのあてはまりに大きな差がなかった.これは,現行のデータから密度効果の有無を明確に推定することが難しいことを示唆している.さらに,相互相関解析(cross correlation)手法を用い,毎年の加入量に親・環境・親と環境の両方のどれが影響しているかを検討した.結果として,我が国の10,6,11系群でそれぞれ親・環境・両者が影響していることがわかった. さらに,将来的な管理戦略評価モデルに向け,プロダクションモデルを仮定した簡単な個体群動態モデルを含む管理戦略評価のためのオペレーティングモデルのひな形を作成した.このオペレーティングモデルを用いて,我が国資源で用いられている生物学的許容漁獲量(ABC)を計算する経験式のパフォーマンスを評価し,管理目標を最大化することにより適切な調整係数を選んだ.本研究から得られた調整係数は,実際にABCを計算する際の調整係数として既に取り入れられ,論文化もなされた.その他,漁獲データの不確実性を考慮できる資源評価モデル(統合型資源評価モデル,stock synthesis)の我が国資源に対する適用可能性を有識者と検討する会合を催し,現行の漁業データが持つ不確実性とその評価の方向性について検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我が国資源の管理戦略評価を行うためのオペレーティングモデルの作成に着手し,そのひな形を完成させた.また,それを用いて,我が国の水産資源管理に用いられている管理ルールの改善の提案を行い,実際に利用され,論文化もんされた.また,再生産関係のあてはめを通して,最大持続生産量(MSY)を達成するための漁獲率や資源量を計算することができた.これをもとにして,我が国の水産資源の量やそれに対する漁獲率が,最大持続生産量を得るための資源量や漁獲率に比較して高いか・低いかを評価することができるようになった.また,我が国資源に適用可能な将来的な管理ルールとして,Hocky-Stick再生産関係とMSYをもとにした管理ルールを考案した. これらの結果については学会発表を行い,現在論文化に向けての準備中である.これより,本課題は,研究の達成度と結果の公表の両方の面から,おおむね順調に達成されていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
まず,管理戦略評価のためのオペレーティングモデルを拡張する.そのさいには,個体群動態モデルに年齢構造や環境変動(レジームシフト)を取り入れ,汎用的なものにする.さらに我が国資源で推定されている資源量や漁獲量に合うようにパラメータを調整(チューニング)できるようにする.作成したオペレーティングモデルを用いて,Hockey-Stick再生産関係をもとにした管理ルールのパフォーマンス評価を行う.実際には別の再生産関係があるにもかかわらず,Hockey-Stick再生産関係を仮定した場合など,様々な状況を想定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していたパソコンの価格が,ウェブ上で確認したときと比べて安くなっていた.また,学会等の旅費については,別の研究費からの支出が許されたため,その研究費から支出した.
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次年度使用額の使用計画 |
去年度の成果は,複数の論文として発表する予定になっているので,論文化のための費用として充てる.
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