研究課題/領域番号 |
26520313
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研究機関 | 国立研究開発法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
市野川 桃子 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主任研究員 (30470131)
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研究分担者 |
由上 龍嗣 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 研究員 (20392904)
黒田 啓行 国立研究開発法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所, 主任研究員 (30416036)
岡村 寛 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, グループ長 (40371942)
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研究期間 (年度) |
2014-07-18 – 2020-03-31
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キーワード | 管理戦略評価 / 再生産関係 / 最大持続生産量 |
研究実績の概要 |
昨年度作成したデータベースを活用し,系群ごとに親魚量・加入量のデータを抽出した.これらのデータに再生産関係をあてはめ,最大持続生産量(MSY)を達成するときの資源量(BMSY)と漁獲率(UMSY)を推定した.これらの値を用い,日本周辺で漁獲されている37系群の資源状態の評価をおこない,世界の資源状態と比較した.さらに,各系群の自然死亡係数・成熟年齢・最大体長・卸売価格などの情報を収集し,これらを説明変数として,資源状態と漁獲圧が何によって決まるかを線形混合モデルにより明らかにした. 結果として,漁獲率がUMSYを上回る資源は37系群の約半数を占め,同様に資源量がBMSYを下回る資源も約半数であった.37系群のうち,とくに,自然死亡係数が高く,成熟年齢が高く,最大体長が大きいもので漁獲率が高く,資源量が少ない傾向があった.また,漁獲量の総量規制がおこなわれているTAC管理対象種では,2013年の漁獲率が他の資源よりも有意に小さく,1998年以降の漁獲率の減少傾向も大きかった.これは,TAC管理の管理効果を定量的に示した初めての研究成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度の7月から3月まで産前・産後・育児休暇を取得したため,平成27年度に当初計画していた研究計画をすべて実施することはできなかった.とくに,新しい管理ルールを適用するためのオペレーティングモデルの拡張作業の進捗が遅れている.しかし,昨年度に作成したデータベースを活用した日本の水産資源の状態評価は順調に行うことができ,この成果によってオペレーティングモデルの拡張作業が順調に進む見通しである.また,世界的な漁業資源学者であるヒルボーン教授が漁業資源管理における科学的な問題を一般に広く紹介した著書「overfishing – what everyone needs to know (乱獲―漁業資源の今とこれから)」の翻訳出版をおこなった.これは,非科学者を含めたステークホルダー間での合意形成が重要になる漁業資源管理において,科学的な情報を広く・わかりやすく提供するために非常に役立つものであり,この成果を含めて,現在までの達成度を「順調」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
27年度に実施した我が国資源の評価について論文発表をおこなう.また,今までの成果にもとづき,オペレーティングモデルを拡張する.具体的には年齢構造・環境変動・レジームシフトの導入し,実データを用いたチューニングをできるようにする.さらに,我が国資源の生物的特徴を反映するため,説明変数間の共分散構造をオペレーティングモデルに導入することを考えている.管理ルールとしては,ホッキースティック型の再生産関係をもとにしたものを開発し,そのパフォーマンステストをおこなう.
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度の7月から3月まで産前・産後・育児休暇を取得したため,予定していた論文執筆や学会出席のための出張等ができなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
現在,産前産後の休暇又は育児休業の取得に伴う補助事業期間の延長を申請しており,認められれば27年度に使用予定だった研究費は延長された1年分の研究費に充当する.
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