研究課題/領域番号 |
26540005
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野 廣隆 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00346826)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 解再構成 / 近傍構造 / 近似アルゴリズム / 最適化 / 固定パラメータアルゴリズム / パラメータ化計算量 |
研究実績の概要 |
遺伝的アルゴリズム,タブー探索,アニーリングといった計算困難な組合せ最適化問題に対するメタ解法(メタ戦略)は,設計が比較的簡単であり,また実用的には十分な近似精度が得られることが知られている反面,理論的な精度の保証に成功している例は限られている.このためメタ解法の高速化や高精度化に関する研究には職人芸的なものが多いのが現状である.本研究はこれらメタ解法に共通する基本操作である局所探索・局所変形に注目した計算量理論を開拓する.メタ戦略の高速化・高精度化の非自明性の一つは,局所探索・局所変形の「性能」は近傍系の大きさ,評価関数に依存し,近傍の大きさと探索のための計算量にはトレードオフの関係に起因する.本研究の目的は局所探索・局所変形の計算量理論により,メタ戦略に新しい設計指標を与えることにある.
上述の目標に対し,本研究では,近似,再最適化(reoptimization),解再構成(reconfiguration)の3つをアプローチの軸としておいている.今年度は特に解再構成においていくつかの成果を得た.(1)クリーク問題の解再構成において,いくつかの近傍系の等価性を示し,この視点からいくつかの制限下での固定パラメータ容易性,また困難性の境界を示した.(2)支配集合問題の解再構成の計算複雑度についてのグラフクラスの観点から調査した.例えば,高速最適化が可能である弦グラフ等のグラフであっても,解再構成はPSPACE完全であることがわかった.一方,その部分クラスである区間グラフに関しては多項式時間アルゴリズムが存在することもわかった.これはクラスPSPACE完全性とクラスPの境界の一つを発見したことを意味するが,例えばこの間に解再構成がNP完全となるグラフクラスが存在するか,といった未解決問題が残されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要に述べた通り,順調に成果が上がっていると考えている.質に関する議論は主観となるが,出版論文数の観点から見ると,計算機科学分野で認知されているシュプリンガー社のLecture Notes in Computer Science から2編が出版されていること(採択率が1/3程度以下),また関連する結果を含むと査読有国際ジャーナル論文(SIAM誌,Theoretical Computer Science誌等)5編を出版するなど関連する分野の研究者の興味を集める研究成果を得ていると考える.
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り,研究成果自体は順調に上がっているため,基本的には当初の方針とは大きく変更することなく研究を進める予定である.ただし,「研究の軸」に関しては,進捗に応じてウェイトを変える必要があると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に国際会議へ投稿した論文が,当該年度から次年度(2016年度)にかけて,採録されつつあり,このための旅費支出を円滑に行うため,初年度に多めの繰り越しを行った.2016年度も引き続き,国際会議に出席するため,そのための費用(35万円)を繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
上述のように1回分の国際会議出席を余分に予定している.
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