研究課題/領域番号 |
26540015
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
谷口 正信 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00116625)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 統計数学 / 時系列解析 / 不偏推定量 / 縮小推定量 / 高次の漸近推測理論 / 金融時系列 / ポートフォリオ / 補間子 |
研究実績の概要 |
定常時系列の線形予測や線形補間は、関与の確率過程のスペクトル密度関数が既知の場合は、解かれている。しかしながらモデル選択や、推定により、実際に得られるスペクトル密度関数には、誤特定化があるのが自然な設定であろう。 この状況下で、疑似線形補間子を構成し、この2乗補間誤差を評価した。このとき疑似線形補間子を縮小することによって、それを改善する疑似線形縮小補間子が構成でき、これが、元の疑似線形補間子を2乗補間誤差の意味で改善することを見た。実際の時系列解析では欠測値があることが多いので、こういった疑似線形縮小補間子の基礎理論は重要に思われる。 疑似線形補間子の構成は、母数型スペクトル密度を適合し、この未知母数を観測データから推測すれば、可能である。さらにこの推定された補間子は真のそれに確率収束する。これをさらに縮小し、2乗補間誤差の意味で改善する補間子を構成できた。 時系列や極めて一般的な確率過程の未知母数推定に縮小型推定量を導入することは可能である。実際、極めて一般的な従属多次元観測の確率分布に曲確率密度関数を導入しその曲母数を最尤推定量で推測することは可能である。この最尤推定量を縮小変形して縮小最尤推定量を導入した。この推定量と元の最尤推定量の平均2乗誤差を3次までの漸近展開で比較して、縮小最尤推定量が最尤推定量を改善する条件を求めた。結果は極めて一般的で、金融資産過程の平均分散ポートフォリオ係数の推定に適用できる。このような金融時系列の重要指標の推測に縮小推定量を導入して、それが従前の平均分散ポートフォリオ係数の推定量を3次の漸近理論の意味で改善することを示した。 この統計解析は、極めて一般的で、種々の分野への応用をもつものと思われる。また不偏性をはずした高次の漸近推測論の構築を意味し、統計解析分野に新地平を開いたと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
縮小推定論は、統計モデルを限定した特殊なモデルで展開する予定であったが、曲確率分布モデルで、多変量従属標本の曲母数に対して3次の漸近推測論を展開することが出来た。これにより、金融資産過程の上のポートフォリオ係数の推測に縮小推定量を導入でき縮小推定論のパラダイムが一気に広がった。 この理論成果は、膨大な応用をもつと思われる。例えば、回帰型時系列モデル、多次元非線形時系列モデル等。 また定常時系列の予測、補間問題に対しても、縮小予測子、縮小補間子のカラクリを明らかにした。またそれらの推定ヴァージョンへの漸近理論も構成でき、該当研究は当初の計画以上に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
予測や補間問題では、定常過程に限定したものであったが、今後は局所定常過程や単位根モデルに対して縮小予測子、縮小補間子の提案とその推定ヴァージョンの漸近特性を明らかにする。 また、縮小推定論も極めて一般的な議論を構築してきたが、例えばセミマルチンゲールなどに対する縮小推定論は構築されていない。このような、金融解析で重要なモデル族での縮小推定量の提案とその高次の漸近理論の構築はさらなる応用範囲が広がると思われる。 また縮小推定論の適用は高次元データに適しており、極めて一般的な曲確率分布モデルの曲母数を観測が高次元の場合まで展開する。これまた大変チャレンジングで大きな問題である。 研究推進はグローバルな視点で行う。すなわち国際先端的な研究者を招聘し、その交流のなかで研究を発展させ、若手研究者を巻き込む形で、国際スタンダードな研究を発展させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、独立標本の縮小推定量に関する関係図書を購入予定であったが、研究課題が一般曲確率分布族への高次漸近理論の研究でとらえられることが分かってきて、この部分の関係図書購入が不要になったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、高次元データへの縮小推定と経験べイズ推定の枠組みで研究を進めるので、これらの関係図書の購入で使用予定である。
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