モバイル通信端末で利用されている広帯域A/D変換器では,消費電力を削減出来る新たな回路設計方法の解明が重要であり,研究が進められている. 本課題では,デルタシグマA/D変換器に用いられるデルタシグマ変調器において,量子化器利得を設計パラメータとして積極的に活用することで,変調器全体の消費電力を抑えられる設計方法の解明を目指し研究を行った.具体的には,「ループフィルタに求められる要求仕様と消費電力」,「各ループフィルタの係数と量子化器利得との関係」に着目し,各デバイスで発生する雑音や量子化器におけるデバイスミスマッチが利得設計に与える影響,振幅制限等の考慮すべき事項を含め,量子化器利得を活用した最適な連続時間型デルタシグマ変調器設計方法の提案・検証を行った.本検証では25MHzの信号帯域を有する無線通信用連続時間型デルタシグマA/D変換器を想定し,設計方法の有効性をシミュレーション結果を通して検討した.研究を進めて行く中で,新たにスルーレート条件等の追加検討事項が発生したが,本研究課題の中で併せて検討する事が出来た.提案設計方法を活用した試作LSIの為の測定環境の検討・準備は完了出来ており,今後は十分な検証結果を学会活動等で広く公表出来るように引き続き本研究を進める予定である. 本課題期間に得られた研究成果は,3回の国内会議ならび2回の国際会議での論文発表を通して,国内外に広めることが出来た.
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