研究実績の概要 |
本研究では、平成26年度に検討した単一磁束量子(SFQ)回路向けプロセッサのマイクロアーキテクチャの詳細を検討した。また、ハードウェア設計や各種見積もりを実施し、有効性を評価した。具体的には、ビットパラレル構成を採用しつつゲートレベル細粒度パイプラインでのマルチスレッディングを実現すべく、シフトレジスタを用いた巡回式レジスタファイルとそのアクセス方法などを新たに考案した。そして、ハードウェア記述言語を用いSFQゲートレベルでの論理設計、ならびに、その結果に基づく性能・電力・面積モデルでの評価を実施した。その結果、理論上、動作周波数は200GHzに達し、現代のCMOSプロセッサと比較して50倍以上の動作周波数向上を達成する可能性があることが明らかになった。また、消費エネルギーは 1/5,000 に削減可能であることも判明した。その一方、 面積についてはマルチスレッディング方式の採用に伴いレジスタファイルが巨大化し、その小規模化が今後の課題であることが分かった。加えて、本研究ではレイアウト設計までは実施しておらず、今後は超高速SFQプロセッサの物理設計に関して詳細を検討する必要があることも示した。 この評価はメモリアクセスが常に1クロックサイクルで完了すると想定した理想状況での評価である。そこで、SFQ回路が得意とするシフトレジスタを用いたキャッシュメモリ・アーキテクチャに関する研究も実施した。このSFQキャッシュでは、シフトレジスタによる巡回バッファ型構造を採り、非破壊読み出しを実現している。また、シフトレジスタをサブアレイ構造にすることでアクセスレイテンシの削減も実現した。評価の結果、従来のSFQメモリ構造と比較してアクセス時間を約40%短縮可能であることが明らかになった。さらに、将来的な応用として、画像追跡システムの低消費エネルギー化を念頭においた適用検討も実施した。
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