平成29年度においては主として、国際会議における研究成果発表、開発したツールの改良、並びにそのツールに関するposter発表を行い、同ツールについては実際の性能チューニング現場における利用実績を得るに至った。 平成28年度末国際会議に採択された論文は、高性能計算プログラムにおけるループ構造の大規模な調査に基づき、性能チューニングの対象となるループ構造(計算カーネル)の同定とそれに対する目標実行効率とを推定する手法に関する研究成果をまとめたものである。平成29年度はこの成果について口頭発表を行った。尚、投稿したtrack (full paper)における採択率は33.8%と発表されている。さらに平成28年度末には研究の過程において主にデータ収集を目的として開発を行ったプログラム解析ツールの公開も行っている。これに対し平成29年度は、専門家の意見を取り入れつつ、研究成果に基づく計算カーネル予測機能を盛り込み、実際の性能チューニング作業におけるプログラム構造理解支援ツールとしての利用を想定した改良を行い、その概要をposterとしてまとめ、国際会議において発表を行った。このツールは、まだ数例ではあるものの、ポスト京の開発に資する性能チューニング業務において実際に専門家に利用されるに至っている。 研究期間全体を通じては、高度な性能チューニング事例検索のためのソースコードの進化系統的分類手法に関する研究成果についてまとめた論文が国際会議において採択(採択率30.2%)され、事例横断的な分類についての研究成果も国際会議において採択(採択率33.8%)されている。本研究課題開始当初予定していたソースコード書換えの正当性を検証する手法の改良については、プログラム構造理解支援ツールの開発へと変更されたが、このツールはポスト京の開発に資する性能チューニング現場で専門家に利用されるに至っている。
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