研究課題/領域番号 |
26540035
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
原 隆浩 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (20294043)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | モバイルネットワーク / アドホックネットワーク / セキュリティ / 情報検索 |
研究実績の概要 |
Top-k検索は、検索条件から計算されるスコアに対して上位k個のデータを収集する検索であり、一般にアドホックネットワークでは検索条件をネットワーク全体に配布し、データを所持する端末が自身が持つ上位k個のデータを返信することで実現される。この際に、ネットワーク内に複数の攻撃端末が存在し、それらが検索結果に入るべきデータを別のデータ(自身がもつスコアの低いデータ)に差し替えると、検索精度が低下してしまう。そのため、本研究ではまず、複数の攻撃端末が存在するアドホックネットワーク環境において、データの返信経路数を増やすと、攻撃の影響をどの程度防ぐことができるかを調べた。その結果、2つの経路を用いた返信でも、概ね検索精度を維持でき、またそれ以上の数にした場合はネットワーク内のトラヒック(通信量)が増えることによる弊害が多いことを確認した。そこで、返信経路数をまずは2つとして、具体的なTop-k検索手法と攻撃端末同定手法を設計した。これら手法はシミュレーション実験によって評価し、その有効性と課題を明らかにした。 上記の評価実験において、検索要求を発行したモバイル端末から遠くに位置する攻撃端末を同定しにくいという手法上の問題が明らかになった。そこで、今年度はさらに、2年目に実施する予定であった「協調処理による攻撃端末の同定」についても、基礎的な研究を行った。具体的には、各モバイル端末が同定した攻撃端末に関する情報を共有することで、攻撃端末の位置関係に依存せずに、いち早く全ての攻撃端末を同定する手法を検討した。この手法では、攻撃端末が健全な端末を攻撃端末として流布する虚偽攻撃の可能性を考慮し、交換した情報の類似性に基づいてモバイル端末をグループ化することにより、攻撃端末による虚偽情報を排除している。この考案手法についても、シミュレーション実験によって有効性を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では今年度は、複数経路を用いた候補データの返信により、攻撃者がデータ差替え攻撃を行う場合でもTop-k検索の精度を維持し、攻撃端末を同定することを目的として、具体的な手法の設計を進める予定であった。この目的に対しては、予定通りに研究を実施でき、モバイルデータ管理分野で著名な国際会議や国内研究会で成果報告を行うなど、十分な研究成果を達成できたものと考える。 さらに、当初の計画以上に研究開発が進み、次年度の研究計画の一部であった、「協調処理による攻撃端末の同定」についても、基礎的な手法の設計を行うことができた。この成果の一部についても、国内研究会で成果報告を行っている。そのため、今年度は、当初の計画以上の成果を達成できたものと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
2年計画の本研究課題において、当初の計画では来年度は、「考案技法の拡張」および「協調処理による攻撃端末の同定」を実施する予定であった。概ね、この方針に従う予定であるが、上記の通り、本研究は計画以上の成果を現状で達成している。また、研究を実施する上で、取り組むべき新たな課題も明らかになったため、その課題についても取り組む予定である。 具体的には、本年度に基礎的な研究を実施できた「協調処理による攻撃端末の同定」について、さらに研究開発を進める。この研究成果は、著名な国際会議や論文誌などへの公表を目指す。さらに、「考案技法の拡張」の一部とも捕らえることができるが、各モバイル端末が検索処理時に交換するメッセージのセキュリティをさらに強固にし、根本的に攻撃を行いにくくするために認証子を用いた検索手法などを検討する。これらの研究を実施した上で、さらに余裕がある場合は、Top-k検索以外のk最近傍検索や範囲検索などの高度な検索を想定した考案手法の拡張を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を、難関の学術雑誌(国際論文誌)に投稿しており、まだ採択されるに至っていないため、別刷代などの物品費が計画よりも少なくなったことが一因である。また、現状では、研究自体は計画以上に進んだが、成果発表という点では国内と海外の1件ずつの成果発表にとどまっており、出張費等が予定よりも少なかったことも原因である。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今年度の成果で未公表の内容についても積極的に対外発表、論文掲載を行う予定であるため、このための別刷費、旅費、会議参加費、英文添削費などに、差額分も含めて次年度の経費を使用する予定である。
|