研究課題/領域番号 |
26540036
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内山 彰 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (70555234)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ユビキタスコンピューティング / モバイルヘルスケア |
研究実績の概要 |
深部体温の上昇原因となる空気との熱交換や運動による熱産生は熱力学的に説明可能であり,身体全体の熱収支を定式化することで全身の体温を計算可能な生体温熱モデルが存在する.これらの生体温熱モデルに対して,利用者の人種や体格といった個人差を表すパラメータを考慮し,利用者に適したパラメータキャリブレーションを行う取り組みがなされているが,一般にキャリブレーションには体表の複数部位と直腸,鼓膜などにプローブを装着する必要がありユーザの負担を伴う上に,環境を調整可能な実験室が必要となる.また,一度キャリブレーションを行ったパラメータでも,体調によって発汗や血流の反応が異なるため,常に利用できるとは限らない. そこで初年度は,生体温熱モデルのパラメータキャリブレーションにおける先の問題に対して,活動中でも常時測定可能な生体情報や環境情報を用いてリアルタイムにキャリブレーションを行うことでユーザに負担をかけず,高精度に深部体温を推定する手法の設計を行った.リアルタイムなキャリブレーションは,活動中に測定可能な体表温度を基準とすることで実現する. 実際に暑熱環境下での被験者7名の歩行データを合計52時間分収集し,性能評価を行った.その結果,標準の2ノードモデルに対して深部体温の平均誤差を16%向上できることを確認した.本研究から得られた成果により,熱中症の原因となる深部体温の上昇を動的に調整したパラメータによって予測することが可能になる.個々人に対して,このまま運動を続けると深部体温が過度に上昇する,といったことがわかれば,適切な人を休憩させたり,給水を指示したりすることが可能になり熱中症の防止に役立つと期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画では、ウェアラブルセンサを用いた深部体温推定の実現可能性とその精度を示すことが目的であった。今年度の研究実績では、ウェアラブルセンサを用いた深部体温推定手法の基本設計を完成させ、実験によりその精度を確認できている。したがって、当初の計画と実際の研究実績を照らし合わせ、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、既存の生体温熱モデルを基に手法を設計しているため、屋外環境における日射から受ける熱量が考慮されていない。このため、生体温熱モデルにおいて追加・修正すべき要因を明らかにし、それに従ってモデルの改良を検討する。また、運動の種類も屋外におけるウォーキングにとどまっており、多様な環境での実験評価も実施しながら、精度の向上を図る。また、提案手法が高精度に深部体温を推定可能な環境と、そうでない環境を明らかにし、それらの要因を分析することで、手法の適用可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会での発表時期が次年度4月となり、このための旅費および参加費を報告年度分より支出することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の理由に記載の通り、次年度4月の国際学会での発表旅費および参加費としての支出を計画している。
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