最終年度は,クリスタルガラス内に配置した微小空隙にレーザを照射するプロジェクタの台数を4台まで増やし,提示映像の解像度とコントラスト比を向上させた.また,実現したディスプレイを用いて被験者実験を実施することにより,解像度の向上とコントラスト比の向上の効果を評価した.これにより,従来よりも複雑な形状の立体映像を表示することが可能になり,また,昨年度までは映像を閲覧する際に,周囲環境の照明を暗くする必要があったが,1000lux程度の通常の居室やオフィスの照明環境下であっても映像を閲覧できるようになったことが確認できた.また,空隙により生成される投射陰を用いてキャリブレーション対象となるプロジェクタのピクセル数を削減する手法を開発し,キャリブレーションに要する時間を削減することも実現できた.また,ヒューマンインタフェースシンポジウム2016において本ディスプレイの実機を展示して対話デモ発表を行った結果,昨年度に引き続き,優秀プレゼンテーション賞を受賞した.さらに,別途実施した口頭発表に対して,第18回学術奨励賞が授与された. 研究期間全体を通じて実施した研究の成果は以下の通りに纏められる.1.提案する方式の裸眼立体ディスプレイを実現するにあたり適した照射対象ディスプレイの材質の選定,2.微小空隙の適切な形状の選定,3.微小空隙の配置アルゴリズムの開発,4.ディスプレイの高速キャリブレーション手法の開発,5.複数台のプロジェクタを用いた解像度の向上手法およびコントラスト比の向上手法の開発. 本研究により,通常の居室やオフィス環境において,複数人が同時に輻輳調節矛盾が生じない立体映像を裸眼で観察可能なディスプレイが実現された.このディスプレイは,設計支援,教育支援,デジタルサイネージ,インテリアなどに応用可能であると期待される.
|