研究実績の概要 |
本研究は,エピソード記憶がもっている,過去の記憶を再体験するかのごとく想起する機能を,ノスタルジア感情というヒト特有と予想される感情機能との関連から,実験的手法によって明らかにしようとするものである. エピソード記憶はメンタルタイムトラベル(mental time travel)という用語に代表されるように,過去を再体験するかのごとく思い出すという想起意識(autonoetic conscioiusness)が重要であるが,ノスタルジア感情を強く有した場合に特にこの再体験感という特徴があらわれやすいと考えられる。 本年度は,個人的ノスタルジア感情が過去のどれくらいの時期から喚起されるかについて検討を行った。また,広告でしばしば用いられるような,音楽によって喚起されたノスタルジア感情が,より一般的な事物(商品)に対する魅力の判断に影響するかどうかを検討した。その結果,ノスタルジアを喚起しない音楽聴取の場合よりも喚起した場合の方が魅力度が高まることが示された。 これらのノスタルジアとエピソード記憶の関連について,2015年8月に国立中正大学(嘉義,台湾)で開催された”The Interdisciplinary Studies on the Role of Memory in the Appearance of Cognition, Epistemic Enquiry, Social Relationships, and Human Well-Being, Chia-yi, Taiwan.”において,”Nostalgia and mental time travel.“というタイトルでの発表を行った。また,2015年11月に生理学研究所(岡崎,愛知県)で開催された生理研研究会 「認知神経科学の先端 宣言的記憶の脳内メカニズム」において,「ヒトはなぜエピソード記憶を持っているのか?」というタイトルでの発表を行った。
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