研究課題/領域番号 |
26540063
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (70237139)
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研究分担者 |
岸本 健 聖心女子大学, 文学部, 准教授 (20550958)
安藤 寿康 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30193105)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 進化 / 発達 / ソーシャルサポート / 大型類人猿 / 比較認知科学 |
研究実績の概要 |
本研究では、他者と共感し、他者をいたわるという、利他的なこころの進化・適応という新しい視点に立った「福祉学」の構築をめざす。本年度は、昨年度に続き、高知県のいち動物公園に暮らすふたごチンパンジーのダイヤとサクラを対象に、個体間の近接関係とその時々の行動の記録に加えて、移動時の追随関係、ケンカの際のサポートの関係、採食時の食物分配、遊び関係の継時的変化などについて、集中的に観察を進めた。その結果、2歳頃には顕著であった、非血縁女性個体による緊密な養育行動が消失し、逆にそれらの個体に対する「からかい」などの行動が頻発するようになった。 また、のいち動物園のミルキーという発達遅滞を示す個体に対して、理学療法士、作業療法士らと連携しつつ、発達検査ならびに療育を継続的に実施し、機能の回復過程について詳しく検討した。その結果、この1年での機能回復には著しいものがあり、次のステップとして、群れへの再導入の可能性について関係者を含めて議論を進めている。 また、ふたごチンパンジーの成果の対照群としてかみね動物園に暮らす1歳違いの2個体の子どもチンパンジーの観察も開始した。これらの個体は人工保育から復活した個体であり、これらの子どもの社会性の発達を縦断的に観察した。 また、京都大学霊長類研究所の四肢麻痺から回復したチンパンジーの機能維持のための認知課題を駆使したリハビリ訓練を継続して実施した。その成果を論文にまとめ、国際誌に掲載が決定した。 これらの研究を3名の研究代表者・分担者に加えて、櫻庭陽子、林美里、竹下秀子、高塩純一、多々良成紀、山田信宏、生江信孝、山内直朗、大栗靖代らの研究協力者とともに推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
のいち、かみね各動物園でのチンパンジーの発達の縦断的観察は着実に進展している。残り1年でその成果を取りまとめたい。また、発達遅滞を示すチンパンジーについても劇的な改善が認められており、現在次の段階への移行を検討中である。また、四肢麻痺から回復したチンパンジーのリハビリ訓練の成果が国際誌への掲載が決定した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるので、のいちのふたご、かみねの子どもたち、発達遅滞の子ども、四肢麻痺回復個体のそれぞれについて、残り一年さらに研究を進めるとともに、それぞれの成果を取りまとめることによって、比較福祉科学という新しい学問の創生の萌芽をさらに成長させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた調査回数に不可避の事由による変更が生じたため、旅費の執行に差分が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの差額については、次年度の調査日程を再度見直すことによって対応する。
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