本研究では、日常生活中で頻繁に行われる正解のない意思決定や行動の選択に関わる脳の機能 (実用性知能)を、脳の一部の機能が損なわれた患者の協力を得て、明らかにすることを目的とした。まず、そのような機能を調べるための認知課題を考案し、また、日常生活における困難に関するチェックリストを作成した。結果、前頭葉の異なる部位が認知機能の異なる側面と関係しており、また、認知機能と日常生活上での困難の間にも関連が見られた。さらに、損傷後の回復過程を調べたところ、受傷後半年以降では、かなりの回復が見られるものの、半数の患者では、依然として認知機能低下や日常生活上での困難が残存することもわかった。
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