研究実績の概要 |
本研究の目的は,人間の嫌悪感認知のメカニズムを明らかにすることである。この目的のもと行った本年度の研究成果は,国際専門誌に掲載された3本の学術論文([1]Yamada, Harada, Choi, Fujino, Tokunaga, Gao, & Miura, 2014, Frontiers in Psychology; [2]Yamada, Sasaki, Kunieda, & Wada, 2014, Appetite; [3]Sasaki, Yamada, & Miura, 2015, Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences)によって公表された。 [1]の研究では,博物館展示を鑑賞中に物体を持ち上げる運動を行わせた結果,鑑賞物や博物館への好意度が上昇したことを示した。これは体性感覚的に得られた重さ情報が鑑賞物の視覚的情報と統合された際に,鑑賞物への処理が促進されたためであると考えている。また[2]の研究では,イチゴとトマトの画像を合成した対象が嫌悪されるという申請者が以前発見した現象について (Yamada, Kawabe, & Ihaya, 2012, Advances in Cognitive Psychology),無意識レベルでイチゴかトマトのいずれかのニオイを呈示するとその対象への嫌悪が低下するという結果を示した。これは無意識的処理されるカテゴリ関連情報を利用してイチゴあるいはトマトとして対象を処理した結果,嫌悪感が逓減されたことを示唆する。[3]の研究では,情動刺激を観察後に上下運動を行なうと,上運動では画像が快に,下運動では不快に評価されることを発見した。これは視覚的に得られた情動情報と身体情報とが遡及的に統合されたためであると考えられる。 これらは本研究目的における解明の対象となる嫌悪感認知メカニズムにおいて,情動情報が他の感覚情報とどのように統合されるかという点について重要な示唆を与えている。 以上のことから本研究の進行は順調であると言え,研究費受け入れ期間内に研究目的を達する見込みは大きいと考えられる。
|