研究実績の概要 |
本研究ではヒトがどのような認知メカニズムのもとで気持ち悪さという感情を形成しているのかという問題を検討した。期間を通して,計22本の査読付き論文と62件の学会発表を行い,感情,身体・注意・意識に関わる様々なメカニズムを明らかにした。 特に最終年度では,まず嫌悪傾向・感受性尺度日本語版を作成し (Iwasa, Tanaka, & Yamada, 2016, PLOS ONE),さらに日本語版嫌悪尺度も現在投稿中である (岩佐・田中・山田,投稿中)。これらの成果は,嫌悪感の個人差を日本人に対しても測定できるようになったことを示しており,それはつまり嫌悪感と様々な認知・生理・神経メカニズムの関係性の検討を我が国でも行えるようになったことを意味している。これまで嫌悪感の認知過程に関する研究が本邦では多くはなかったことから,この意義は非常に大きい。 さらに,集合体嫌悪 (Chaya, Xue, Uto, Yao, & Yamada, 2016, PeerJ) や不気味の谷 (Kawabe, Sasaki, Ihaya, & Yamada, 2017, Cognition)に関する論文を刊行し,一般的な「嫌悪感」に収まらない様々なタイプの気持ち悪さに関わる現象の生起要因について検討・議論を行った。 それだけでなく,嫌悪感と身体性との関係についての直接追試研究も行い,Psychonomic Societyの発行するジャーナルに厳密な査読後に事前登録することができ,現在実験を進めている (Nitta, Tomita, Zhang, Zhou, & Yamada, accepted, Cognitive Research)。 本研究は嫌悪感がどのようにして意識的に感じられているのか,そして嫌悪感に我々の行動がどのように規定されているかを考える上で非常に重要な示唆を与え,今後の研究への橋渡しとなった。
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