研究課題/領域番号 |
26540072
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
橋本 照男 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (40553756)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 前庭感覚 / 体性感覚 / 姿勢制御 / 脳損傷患者研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、電気的前庭刺激(GVS)を用いて内耳にある前庭感覚器を刺激した際の姿勢制御反応が、指先への体性感覚入力から受ける影響を明らかにすることである。実験計画では、初年度に健常者を、次年度に脳損傷患者を対象とした実験を行う予定であったが、前年度に適切な患者が見つかったため、そちらを優先した。今年度は健常成人を対象として、前庭-体性感覚の統合的処理の平均と個人差を検討した。男性10名、女性4名の計14名の成人を対象に実験をおこなった。代表者らが予備的実験の少数の被験者において発見したGVSによる姿勢傾斜反応が指つきによって増大する事態を多くの被験者において再現することができた。前年度の脳損傷患者研究の結果から、右島皮質の後部周辺領域が前庭-体性感覚の統合的処理に関わっていることが示唆されていたが、健常者においても、右半球優位、左手指への体性感覚入力が右よりも強く姿勢制御反応を引き起こすことが示された。 これまで前庭処理は体の動きに伴う眼球や頸部の運動を引き起こすものとして、自動的な反射に関わるもとの考えられてきた。視覚による立ち直り反射は視覚皮質が関わることが知られていたが、体性感覚が皮質レベルで前庭処理に影響を及ぼすことは知られていない。皮質での情報の統合は、複雑な処理が可能であることと高次機能への影響を示唆している。それは前庭感覚入力がない状態、例えば寝たきりの状態や、微小重力下や無重力状態で長期間生活することが運動・感覚機能だけではなく高次認知機能にも影響を与える可能性を示唆する。重力環境の変化による心的機能の変化とその補正法を検討する上で、本研究成果は重要な役割を果たすことが期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に適切な脳損傷患者が見つかったため、当初の計画を変更して患者研究を先に実施し、健常者を対象とした研究を本年度に実施した。その変更に伴い、実験場所と設備の確保、被験者リクルートに時間がかかってしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
実験計画では健常成人の被験者を30名を予定していたが、約半数しかデータを集めることができなかったため、次年度に被験者数を増やす。また、前年度の脳損傷患者2名は本年度の健常成人よりも高齢であったため、年齢を統制した健常群との比較が必要であるため、来年度にそれを行い、とりまとめて発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
被験者数を確保できなかったため、その謝金とデータ整理の学生アルバイトへの謝金、それらをまとめて発表するための出張・学会参加費が次年度使用額となる。
|
次年度使用額の使用計画 |
被験者数を増やし、研究成果をまとめて発表するために使用する。
|