本課題では、従来のマルチスペクトセンサの光利用効率を低下させる原因となっていたスリットやフィルタを排除した新しいマルチスペクトル計測の光学系とセンサ原理を開発し、その効果をシミュレーションと実際のハードウェアの試作を通じて検証してきた。スリットやフィルタを排除すると、近隣画素間の情報や波長バンド間の情報のクロストークが避けられず、各画素の受光量は近隣画素や異なるバンドの光量が混じり合ったものになるが、27年度までに理想的な光学系に対する計算機実験を通じて、こうしたクロストークを計測後の数値的な信号処理により排除できることを検証してきた。当初の計画では、有効性の検証された計測原理を27年度中にハードウェアとして実現して、計算機内の理想光学系では想定していなかった光の散乱や回折、ボケなどの光学系の誤差が生じる実際の状況で原理が通用するかを実証する予定であった。しかしながら、上記クロストークを排除する数値的処理は一種の逆演算となるが、この逆演算が不良設定問題となって、想定通りの数値演算精度が得られないことが判明したため、当課題を28年度にまで延長し、クロストークが分離しやすくなるように光学系の設計を見直した。その結果、撮像素子の上に配置していたマイクロプリズムアレイをレンズ手前に配置した上で、スリットにより周期的に光を遮ることによって、スリットによる開口面積の減少をわずかに留めながら、クロストークの程度を軽減することができ、逆問題の解が上記のような要因下でも求まるようになった。
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