研究課題/領域番号 |
26540084
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川嶋 宏彰 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (40346101)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 魚群制御 / 3次元追跡 / 群れ / パーティクルフィルタ / 相互作用解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,少数の疑似個体を通じて,魚群全体を制御・誘導するための原理を明らかにすることである.特に本研究では,数匹から数十匹程度の魚の群れを対象とし,実際の軌跡データに基づき,魚群の相互作用モデルを獲得する手法を確立するとともに,疑似個体を通じた効果的な働きかけを設計することを目指す.そこで本年度は以下の研究を行った. (1) 魚の3次元形状モデルを利用した魚群の3次元追跡 水槽の外に設置した複数台のカメラを用いて,水槽内を群泳する6-10匹程度の魚群(体長2-4cm,カラシン科)における,各個体の3次元位置および方向(ピッチ,ヨー)を追跡する手法を提案した.まず,背骨およびそれに沿った断面形状を事前にパラメトリックなモデルとして与え,パーティクルフィルタの手法を用いて,形状パラメタおよび3次元位置や方向を毎時刻伝搬させるとともに,水槽内外での屈折も考慮しながら画像上で尤度評価を行う.これにより,水槽内面における反射や個体同士の遮蔽などに頑健な追跡を実現した.さらに,個体間の空間的位置の近接性,方向の類似性,軌跡同士のパターンの類似性,およびその時間的近接性を用いて,どの個体が,いつどの個体に影響を与えているかを推定する手法を検討し,本年度開発した追跡手法が,来年度計画している魚群の相互作用モデル構築にとって十分な精度を持つことを確認した. (2) 映像刺激による魚群の追従運動の解析 水槽に接して設置したディスプレイに,同種個体の映像を提示・制御した際に,実際の魚群がどの程度追従するかについて検証を行った.本年度は,数個体が単純な往復運動を行う映像を提示した際に,それに対して実際の魚群の運動がどの程度同期するかを,周期および位相の両面から解析した.その結果,現時点での検証数は限られているものの,提示映像が実際の個体の往復運動を誘発することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,個体間の距離といった連続量だけでなく,突発的な動き出しといったイベント(離散事象)が,相互作用モデルの構築に重要であるという仮説を提示している.この仮説の検証には,個体の運動に関してイベント分類ができる程度に詳細な軌跡データが必要となるが,本年度は,追跡によって得られた軌跡データを分節化し,イベントとして分類・記述することで,個体間の影響伝搬解析に利用可能であることが確認できた.したがって,研究の目的を達成する上で,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,実際に魚群を追跡した軌跡データから,個体間の相互作用モデルやそのパラメタを推定する手法を考案する.さらに,得られたモデルの有効性については,モデルに基づいて設計した疑似個体のフィードバックが,魚群の誘導につながることを示すことで検証することを計画している.そのためには追跡手法のリアルタイム化を進める必要があるが,開発期間がある程度かかると予想されることから,これと同時に,すでに追跡された軌跡データからのオフラインでのモデル構築と予測精度評価を行い,交差検証等による評価を行っていくこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた海外での成果発表について日程の都合上見送ったため次年度使用額が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に得られた成果について来年度に国際会議等での発表を計画しており,次年度使用額はその旅費および学会参加費の一部として使用する予定である.
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