本研究では、音場の3次元伝搬の様子をリアルタイムに可視化する計測技術としてディジタルホログラフィーを用いることを提案し、その実証実験を行った。昨年度は、音場計測を行い、時間的位相分布から音声情報の再構成に成功したが、計測範囲が8 mm角程度であり、音場の空間的な流れの可視化には至っていなかった。本年度は、音場計測における周波数特性の実験的検証と、計測範囲を拡大するための縮小光学系の導入及びマルチビームを用いた空間分割記録の2つの項目を検討した。 はじめに、ディジタルホログラフィーによる音場計測技術を評価するために、音場の周波数特性を検証した。その結果、音の大きさと周波数に関して定量的計測が可能であることを実験的に示すことに成功した。しかしながら、周波数500 Hzを境にして計測感度が減少することを確認した。この原因を解明するためには、高周波側での測定を追加し、詳細な検証が必要である。次に、音場の空間的な可視化を行う音場イメージングに向けて観測領域の拡大について検討した。昨年度に構築したシステムでは、観測領域がイメージセンサーの大きさで制限され、計測範囲が狭い(8×8 mm)という問題があった。この計測範囲では、対象とする音の波長は長く(440 Hzの場合で波長は77 cm)、音の空間的なふるまいを捉えることは難しい。観測領域の拡大では縮小光学系の導入とマルチビームによる2つの方法を検討した。縮小光学系においては計測範囲を縦横ともに約3倍に拡大することができた。またマルチビームによる観測領域拡大では、2地点同時計測により、約26.95 cm離れた位置での位相計測から音場が伝搬する様子の可視化に成功した。以上の結果より、ディジタルホログラフィーを用いた音場イメージングの実験に成功し、さらなる領域拡大によりメートルサイズの空間における音場の流れを可視化することが可能になる。
|