従来の幾何形状当てはめ手法では、計測データは離散化されているにもかかわらず、それに対して連続モデルを当てはめている。このため、形状モデリング過程の幾何学的処理の計算精度を保証し、構築したモデルの信頼性を提供するという観点において、本質的な問題があった。本研究課題では、格子点データとして計算機内に格納された離散点集合に対して、外れ値やノイズが存在するという前提の下で、できるだけ多くの格子点データ説明する離散形状モデルをあてはめる手法を開発することを目指している。
平成27年度は、形態学的離散化手法によって離散化された多項式曲線のあてはめ問題に取り組んだ。形態学的離散化は、施す構成要素(連結球)の端点のみに形態学的作用を施して得られる近似離散化と連結性の点で同等であるという平成26年度の結果に基づいて、注目している格子点データを、離散化後にインライアーとする多項式曲線を定めるパラメタが存在する領域(実行可能領域)の境界をデータ点と連結球の端点の座標を用いて記述し、インライアー数の和を最大化するパラメタを求める問題を離散最適化問題として定式化した。そして、その問題の局所最適解を求めるアルゴリズムを検討した。実行可能領域が凸となるための入力データが満たすべき条件を見出し、その条件が満たされる場合、局所最適解を効率的に求めるアルゴリズムを考案した。
一方、離散形状モデル当てはめには、離散変換(特に、離散剛体変換)を施して、二つの離散形状が一致するかどうかの判定が必要になる。そのため、変換前後の形状が与えられたとき、二つの形状を一致させる離散剛体変換を効率的に計算することが求められる。変換の離散化によって得られる離散剛体変換全体の関係をグラフ構造で表現し、そのグラフ上で、与えられた二つの離散形状を一致させる離散剛体変換を探索するアルゴリズムを考案した。
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