本研究は,盲導犬のメタファに基づいて,安全確保のためにあえてドライバの意に背く「利口な不服従」を行い得る運転支援システムの設計と運用の原理を構築することを目的とするものであった.利口な不服従が許容されるためには,運転支援システムに対する人の適切な信頼が重要であることから,信頼醸成のための訓練プログラムを開発することを目的とした. 平成28年度は、平成27年度までの視野狭窄環境下での運転行動分析や、信頼の構造に関する分析に基づいて、訓練プログラムの検証に取り組んだ.訓練は,安全性を阻害しないようにするとともに、実運用を視野に入れて,医療機関で無理なく設置できる小型ドライビングシミュレータでの実施を想定することから、小型ドライビングシミュレータで視野狭窄環境下で走行したときに発生しうる見落としを体験できるプログラムを構築し、検証をおこなった。 総合的には、一連の研究を通じて次のことが明らかになった。視野狭窄が自動車の運転にもたらす影響を明らかにするとともに、ドライバ自身の努力による対策では限界があることを明らかにしたうえで、それを踏まえて視野狭窄を持つ人に向けた運転支援システムの案を構築した。また、ドライバがシステムを適切に信頼できるようにするために、信頼の構造を分析したうえで、適切な信頼が醸成されるための基本要件を明らかにした。さらに、小型ドライビングシミュレータによる訓練プログラムの構築を行った。
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