平成27年度は,前年度の研究をさらに発展させ,感性を触発し,出会いの場の生成を促すFog BoxとMassive fog displayの設計開発に挑戦した.そのために,霧そのものが有する自然性を活かした表現メディアの開発を目指すことにした.具体的には,霧の動きによって体験者のイメージや動きを引き出すことができるパーソナル型の装置(Fog Box)を開発した.開発した装置(325×292×218mm)は,霧生成部と拡散霧噴出部から構成されている.この際,勾配をつけた霧の噴出面の角度をサーボモータにより操作することで,霧の自然な流れの変化を実現した.そして,身体運動(手の動きや姿勢変化)と霧の噴出面角度,さらにはFog Boxに投影する映像メディア(波メディア)の動きとを関連づけることにより,霧メディア空間との身体的インタラクションを実現した.その結果,「波を色々な方向に動かしたくなった」,「霧の流れが変わることで,波に対するイメージが変化した」などのコメントが得られ,霧に自然な流れを与えることで身体の動きやイメージを多様に引き出せることを示した. さらに,昨年度開発したMassive fog displayを複数台用いて,霧の海のような空間を創り出し,この空間に自然感を有する映像メディアを投影することを試みた.具体的には,身体動作や外界の変化により霧形態が変化する霧メディア空間を創り出すとともに,この空間内でシャボン玉遊びを可能とする映像メディアを新たに開発することによって,霧メディア空間に共創による表現の場を生成できることを示した. 以上より,遠隔地間での身体表現の共創を可能にする霧ディスプレイの設計には,霧の自然性と身体性を取り込んだ映像メディア空間の生成が有効であることや,それによって,従来の映像メディアでは実現が困難であった,場の感性の触発が起こる可能性があることなどを考察した.
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