研究課題/領域番号 |
26540112
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本間 経康 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30282023)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 計算機支援診断システム / 乳房X線撮影 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究では,乳がんの早期発見に有効とされる乳房X線撮影による画像診断において,読影医師の負担軽減のための計算機支援診断(computer-aided diagnosis, CAD)システムの病変検出・診断論理の高度化と定量化による性能向上を目標にしている。とくに,これまで困難であった診断上有用な画像特徴量の自動抽出を,大量のデータを用いた深層学習(deep learning)により学習的に獲得することで,信頼性の高い意見提示が可能なCADシステムの開発を目指し,本年度は次のような機能の開発と性能検証を行った。
1.乳房密度の定量的推定法の改良:昨年度開発した,乳がんの罹患因子の一つと考えられている乳房密度を計算機を用いて自動的に推定する手法の定量性を向上させるとともに,罹患リスクをより統計的に妥当な解析方法で明らかにした。具体的には,推定手法において,これまでよりも手動設定するパラメータ数を減じることで,設計者の経験や主観の影響を受けにくい高精度な推定を可能にした。また,収集可能な臨床データ数が少なくても,統計的により妥当な解析が可能な方法を採用し,その罹患リスクを明らかにするとともに,その他の因子についても考察した。
2.Deep learningを用いた自動的な画像所見の特徴量抽出:Deep learningは入力データを与えるだけで,自動的にそれらを識別する特徴量を学習的に抽出可能であるが,その学習には数十万,数百万という大量のデータが要求される。しかし,臨床画像の場合には十分な数のデータを用意することは一般に難しいため,入手が容易な自然画像での学習結果を転移する効果的な学習手法を開発し,その有効性を実験的に検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画のうち,①Deep learningを用いたCADシステムの実装に関しては,これまでの課題であった学習に必要な大量の入力データを,入手困難な臨床データではなくweb等を通して容易に収集可能な自然画像データで代替する転移学習の枠組みを提案することで解決の見通しを得た。これは想定以上の進捗・成果である。また,②研究に必要なデータベースの構築は概ね予定通り進捗した。一方,③読影論理に影響を与える画像解剖学的特徴の解析・特定については,乳房密度に関してある程度の成果があったものの,想定していた以上に困難な課題であることが判明した。
以上より,3つの研究計画項目のうち,1つは計画以上の進展,1つは概ね計画通り,残る1つは計画よりやや遅れたため,これらを総合して,概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究計画で遅れが生じた読影論理に影響を与える画像解剖学的特徴の解析・特定については,特徴量が複雑で多岐にわたるため網羅的な解析は難しいことが分かってきた。しかし,deep learningによる病変と正常画像の分類では,高い識別結果を得ることができたため,自動的な特徴量抽出はある程度可能であることが示唆された。今後は,自動抽出された特徴量の可視化など,解析方法を工夫することにより,この課題の解決を試みる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発したシステムの知的財産申請について検討していたことによる,学会発表等の遅れが原因で,旅費ならびに論文掲載料等の執行が遅れたため。また,一部のデータ収集が年度末になったことにより,データベース構築用のデータ入力作業を年度内に行うことができず,謝金等の執行が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでに開発した技術の知財申請の検討は終えたため,学会発表等の原稿は投稿を済ませており,採択されれば次年度旅費ならびに論文掲載料等は速やかに執行する計画である。また,データ入力作業も次年度速やかに再開し,謝金を執行する計画である。
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