電子端末を介した言語活動は、我々の日常生活になくてはならないものとなっている。読むべき対象が量的にも質的にも多様化し、対応して読み方のスキルも複雑になる中で、テキストの画像特徴や読み手の状況にも考慮した「読まれ方」の言語処理は、これまであまり検討されて来なかった。そこで本研究では、画面上でテキストを「読む」行為に焦点をあてて、その計測・モデル化・支援について検討を行う。
本研究では平成27年度において、画面上で人が文章を読む際の視線計測の精度を向上するために、視線停留点の座標軸上での分布を単語位置に対応づけるためのアラインメント手法の開発を進めた。具体的には、テキスト上での視線停留点間の遷移に注目して、読み戻りなどの遷移タイプを推定する手法を新たに提案した。また、推定した遷移タイプを新たに素性として加えることで、視線とテキストの位置合わせの精度が向上することを示した。さらに、ウェブアプリケーションを使った視線位置合わせ編集ツールについて、ソフトウェアをウェブ上で公開した。平成27年度ではさらに、複雑な読み方が必要となる翻訳作業とその支援環境に焦点をあてて、連携研究者と協力して、翻訳時の画面上での視線・マウス・音声ログの収集に取り組み、翻訳作業における読みのプロセスの分析を進めた。
平成28年度においては、平成27年度までに取り組んだ研究成果をとりまとめ、国際会議 ETRAのデモセッションで平成27年度に発表した視線アラインメントツールFixFixを公開した。また、データや実験結果を整理して、成果を雑誌論文で発表した。また、翻訳時の作業者のログ取得と解析については、引き続き分析を進め、成果を国際会議で発表した。
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