最小支配集合に基づく頑健な制御については、昨年度に引き続き少し別の観点から研究を行った。以前の研究において無向ネットワークにおける最小支配集合に基づく必須頂点の計算法を開発したが、本年度は有向ネットワークにおける最小支配集合に基づく必須頂点の計算法を開発した。具体的には、必須頂点や冗長頂点を局所的な情報のみから数多く同定する前処理手法を適用し、それに以前に開発した整数計画法に基づく手法を適用するという手法を開発した。その結果、以前に開発した手法と比較し最大で170倍程度の高速化を達成し、かつ、6万5千頂点からなるネットワークに対して厳密解を計算することが可能となった。 ブーリアンネットワークの制御については、静的および動的な定常状態(アトラクター)を識別するのに必要な遺伝子数について研究を行った。この研究は細胞の種類を見分ける遺伝子マーカーの発見に応用できる可能性がある。主要な結果の一つとして、2個の動的定常状態を識別するには2個の遺伝子の動的状態を観測すれば十分であることを中国剰余定理を用いて証明した。また、与えられた定常状態を識別するための最小数の遺伝子群を見つけるアルゴリズムを開発した。そのアルゴリズムを実際の遺伝子ネットワークのブーリアンモデルの解析に適用した結果、少数の遺伝子で定常状態を識別可能であることを確認した。 また、ブーリアンネットワークのアルゴリズムに関して代表者がこれまでに行ってきた研究を中心に説明した英文書を出版した。
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