従来の複数の車輪型ロボットによる協調搬送では,ある一台がリーダーとなり他のロボットがリーダーに追従するリーダー・フォロワー型が盛んに研究されてきた.この方式はリーダーとフォロワーの通信を必要としないという長所がある反面,リーダーが動作を始めてからフォロワーがその力に応じて動作計画を行うため,二足歩行ロボットではその動作の時間遅れが転倒を引き起こす危険性がある.そこで本研究では,全てのヒューマノイドロボットを対等に扱う対称型の協調搬送制御を開発することを目的としている. 平成28年度は「遠隔操作コックピットの開発」および「2台のヒューマノイドロボットによる検証実験」に取り組んだ.「遠隔操作コックピットの開発」の課題では,平成27年度までに開発した「オンライン歩容生成技術の確立」を応用し,複数のヒューマノイドロボットが一つの物体を把持している状態で,操作者がジョイパッドで,オンラインで物体軌道を指令できるようにし,この手法を用いて「2台のヒューマノイドロボットによる検証実験」に取り組んだ.「2台のヒューマノイドロボットによる検証実験」は,人間サイズのヒューマノイドロボットHRP-2を用いて物体搬送実験を行い,本研究で構築した,複数ヒューマノイドロボットの対称型協調制御則の有効性を確認した.また,動力学シミュレータOpenHRP3を用いて従来のリーダー・フォロワー型の協調制御則との比較を行い,リーダー・フォロワー型ではヒューマノイドロボットの何台かが転倒に至るような搬送速度でも,提案する対称型協調制御則では全てのロボットが転倒することなく物体搬送が可能であることを示した.
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