研究課題/領域番号 |
26540135
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉原 知道 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70422409)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 知能ロボット / 二足歩行 / 行動遷移 / 運動制御 / 人型ロボット |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)単位行動のレパートリー拡張、(2)行動間メトリック定義、(3)複数単位行動群の構造配置の三点を課題とした。 (1)については、本研究開始以前に開発していた二脚ロボットの立位維持、定常的踏み替え、非定常踏み出し、直進歩行を統一的に行う制御器を更に拡張し、新たに左右方向歩行、任意曲線経路に沿った歩行、これらを組み合わせた平面上全方位歩行と、跳躍まで可能になった。さらに重要な成果として、これらの制御器を全て移動中のロボット身体座標に対して再実装した。これまで第三者の視点からロボットを観測していたのに対し、ロボット自身の視点から環境や自分の状態を観測し、身体の操り方を決定することが可能になった。 (2)と(3)については、まだ一般的な方法は見出せていないが、開発した制御器は全てお互いに連続遷移可能な形で定式化されている。運動一種類につき一つのパラメータで遷移可能である。歩行中の重心上下動制御にも着手しており、まだ完成していないが制御器拡張の方針は立っている。 上記とは別に、人が日常的に生活している程度の複雑さを持った環境内で、ロボットが自律的に移動経路を探索する課題にも取り組んだ。Rapidly-exploring Random Tree Connectionによって得られた経路を、後処理によって準最適解に漸近させる方法を開発した。経路探索と最適化を同時に行うRRT*と呼ばれる方法に比べて、厳密な最適性を諦める代わりに、10倍以上高速に結果を求められることが特長である。また得られる経路は、同一の幾何学的位相を持つものの中では最適なものとなる。これは、環境と身体制御とを効率的に結び付け、行動創発を促進する布石となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、当初研究計画に掲げた三つの課題(1)(2)(3)のうち、(2)(3)は完了していない。(1)単位行動のレパートリー拡張に重点を置いたためである。ただし、そのこと自体は間違った方針ではなかったと考えている。全方位移動制御は予想よりも難易度が高く、一年間をかけて取り組む価値のある課題であった。また、これまでに開発した制御器の遷移パラメータ、それらのつながりを明らかにできている。その意味で、各論的かつ発見的ではあるが(2)(3)も進められたと言って良い。今後、行動レパートリーが更に増えて、それらのうち合成できるものとできないものが明確になれば、制御器の立体構造も明らかになり、例えば歩行と跳躍を合成した全方位走行運動の創発なども可能になるだろう。 一方で、当初計画になかった複雑環境内での行動創発につなげる情報処理に成果が得られた。次の課題である制御器からの行動系列の自動生成に示唆を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、更に行動レパートリーを増やし、これまで各論的に見出してきた制御器間のつながりから、制御器を立体的に配置する課題に取り組む。行動レパートリーについては、開発途中の重心上下動を伴う運動に加え、予定通り上肢を用いた3次元移動や物体操作を行う。一部には既に着手している。制御器の立体的配置については、引き続き当初計画の方針で行う。 今年度の新たな課題として掲げている、行動系列の自動生成については、具体的な作業シナリオを設定し、多少先見的・発見的であっても行動系列の例をまず考え、議論の出発点とするのが有効と考えている。作業シナリオの例は既に幾つか設定済みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は理論的側面に注力したことと、既に保有していた部品を利用できたことで、ロボット改造に伴う物品購入は無かった。これにより、計画時にロボット改造のために確保していた予算をほとんどそのまま次年度使用額に移行することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
開発計画は進行しているので、問題は生じない。また、幾つかの部品の新規購入が必要なくなった分、より性能の高い力センサの購入に当てる予定である。
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