研究課題/領域番号 |
26540138
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60332524)
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研究分担者 |
佐藤 洋 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, グループ長 (10260423)
大谷 智子 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (40422406)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感性情報学 / 認知科学 / ユーザインタフェース / 情報システム |
研究実績の概要 |
本研究は,笑いを引き起こす音声メディアの特徴を工学的に明らかにし,その特徴を積極的に利用することで,笑いを引き起こす音声の合成技術の構築可能性を明らかにするものである。笑いを引き起こす音声メディアの特徴を反映するフィルタを構築し,通常の音声に適用することで,聴取者に笑いを誘発する音声を合成することを目指す。 平成26年度は,本研究で最終的に実現すべき目標となる音声に関し,落語や漫才など笑いを誘発する音声メディアを対象に,適しているか否かについてを研究メンバーで議論した。その結果,今回の研究では文脈は対象としないこと,メインの音声のみが対象となることを考慮し,落語の音声が適しているという考えに至った。また,外国語で収録された様々なコメディ番組等のメディアも,文脈を対象としない本研究において適した対象であるという結論も得た。 これらの検討と平行して平成26年度は,音声聴取の聴取者の基礎特性を明らかにすることを念頭に,視聴覚音声メディアにより提示される音声情報の聴き取りを,系列再生課題を用いて実験的に検討した。実験の結果,複数人が同時に話しているような環境において,いずれか一方と同期した話者映像が加わることでターゲットとなる音声の分離が容易となり,その結果,系列再生課題の成績が向上する可能性があることが明らかとなった。この知見は,本研究のような感性に着目した音声の聴取という点にも適用可能であり,複数人の音声が混合して提示されるような状況で笑いフィルタを適用した音声のみに着目させたい場合においても,妨害音,ターゲット音のいずれかに同期した映像を提示することによりターゲット音の聴き取りが容易となり,本研究の効果を分析しやすくなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は萌芽的な研究であり,実際に研究を進めていく上での方向性をより深く議論することが重要となる。初年度である平成26年度は,使用する音声メディアの選定や研究期間全体での実験の手法などを研究グループ全体で深く議論し,その結果,平成27年度に具体的に実験を行えるまではっきりとした方向性を決定することができた。さらに,本研究の基盤となり得る音声聴取時における聴取者の基礎特性も明らかとなったことから,本研究は概ね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究期間は2年間であり,平成27年度は最終年度となる。平成26年度に研究の方向性や具体的な実験手法について明らかとなったことから,平成27年度はその計画に沿って,言語情報を考慮する必要のない外国語のコメディ番組の収録メディアを対象としてその音響分析を進めるとともに,日本語の音声コンテンツに関しても,通常発話させたものとの比較や知覚実験を通して,笑いを誘発する音声メディアの音響特徴量を分析して,フィルタの設計を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験で使用する音声メディアの選定を詳細に行ったこともあり,本格的な実験を次年度に行うこととし,当初予定していた実験謝金が発生しなかった。とはいえ,残額は26,000円ほどであり,概ね当初計画通り使用できていると考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は当初予定通り研究を実施し,平成26年度に生じた残額は平成26年度に計画していた実験を実施する際の実験謝金として使用する予定である。
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